暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
大徳の答えは白に導かれ
[5/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
っかりと聞くつもりなんだろう。
 桃香はギリと歯を噛みしめて、自分の中で暴れる心を抑え付けているようだった。
 でも……まだ終わってない。こんな程度で終わりにはしない。お前にはさらに言っておかなければならない。

「桃香、此処からの話はさっきよりもっとしっかり刻み込め。お前は……曹操と変わらない、いや、下手すればそれよりも酷いかもしれない」

 大きく息を吸った桃香だったが、どうにか言葉を抑え込んだようだ。心の内を表すように、瞳は悲壮と苦渋に深く沈んで行った。

「カタチは違うけど、目指してるのが平和な大陸ってのは同じ……そんな事が曹操と変わらない理由じゃあないぞ。お前がこれからするだろう戦いは、自分が望む世界を作り出す為に、自分の国の民を多く犠牲にして行う戦い。叩き伏せて無理矢理従えるか、叩き伏せて諦めさせて同調させるかの違いでしかない。結果を見ても、過程を見ても、曹操のしてる事と何にも変わらない。これは皆を率いる『劉玄徳』個人のわがままだ」

 昔の桃香なら、きっと違うとかダメだとか言い返してきただろうけど、今の桃香は全てを呑み込んで消化してくれる。
 自分が否定されて反発するだけの奴は王の器じゃあ無い。受け入れた上で曲がらずに何かを為そうと走り続ける奴じゃないと人を導く王足りえない。
 秋斗は……この伸び代に期待してたんだろう。私が今言ってるような事をいつか話すつもりだったのかもしれない。いや……間違いなく、あいつならそうするはずだ。
 もう一つだけ、大陸を救う王の土台を造って居なくなったあいつの代わりに言っておこう。

「曹操よりも酷いっていうのはな、曹操は殴ると宣言した上で殴るっていう……私は納得し兼ねるけど、ある意味で真っ直ぐなやり方。桃香は言う事を聞かないと殴りますと無言で脅してる事になるんだ。そんな状態で話し合いも何もあったもんじゃないさ。ただの交渉、もしくは脅し、それがお前がしようとしてる『話し合い』だよ。前にお前が曹操とした交渉と同じく、な」

 絶句。やはり桃香はこれに気付いてなかったのか。
 最後に力を使ってでも止めるっていうのはそういう事だ。例え力を使うまでに優しく語りかけようと、力を持ってる時点で無条件の信頼関係なんか築けるはずも無い。桃香の論の致命的な欠点は、結局は力に頼る所なのだから。
 顔を俯けて、桃香は震えながら沈黙していた。息荒く、突きつけられた現実に押しつぶされそうに見えた。
 考えてるだろう。悩んでるだろう。苦しんでるだろう。叫び出したいだろう。
 矛盾を背負うってのは本来、気が狂う程の罪悪感と自責に苛まれるモノ。ブレない何かを秘めていないと自分の全てが折れてしまうほど重厚な塊。もしくは……秋斗のように、自分の命を投げ捨てる程に歪んで行くかだ。
 私も嘗て感じた事があるモノ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ