大徳の答えは白に導かれ
[4/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ない。秋斗が諦めさせられなければ、お前がどんなに平和な世界を作ったって否定し続けるだろう。雛里だけじゃなくて、他にも諦めない奴が出て来るのも分かってたか?」
口を挟んで言うと、桃香は茫然と目を見開いた。
「……諦め?」
反応したのはその言葉だった。桃香は先を見過ぎてるから、その時の相手の気持ちが見えてなかったのか。作る世界は確かにいいモノであっても、相手も自身の作る世界を望んでいるというのに。
「お前の望み、平和な世を継続させる為に手伝って貰うっていうのは、お前が抑え込んだ奴等にとっては自分の望みを諦めた状態なんだぞ? 曹操にしても、雛里にしてもだ」
桃香が望みを叶えるって事はそういう事だ。全ては同じ。結局は自分のわがままを押し通すってことなんだから。
私にしても、幽州の民だけを想うなら曹操に従って治める方が後々の為にもなるのは間違いない。だけど……私が望み、皆に望まれた公孫伯珪としては、曹操に従わないというわがままを押し通す事を選んでいる。
言うなれば、過程や結果に於ける利や理で無く、矜持や想いを秤に乗せる選択をしたということ。犠牲になる者達を必要な犠牲と割り切って。
ここからの桃香には私から言っておかなければならないか。
「いいか? 一人でも多くの犠牲をなくしたいなら、他の荒れている場所を治めた後で曹操に従えばいい。曹操が善政を敷いているのは確かだから、争うで無く、傷つくでも無く、傷つけるでも無く、早急に乱世を終わらせられるだろう」
直ぐに桃香は苦悶の表情に変わった。
争う前に従えば多くの犠牲なんか出るはずも無いけど、自分の望みを諦めて、曹操に天下を委ねろと言えば納得出来るわけも無いだろうな。曹操のやり方は今を切り捨て、後の大きな平穏を望むやり方。桃香の志している事は……今消え行く命を一つでも多く救い、一つ一つ繋げて大きくするやり方。どちらかが折れなければどうしようも無いモノだ。
けど――
「これはお前のしようとしている事にも繋がるんだけどな。従う事に納得出来るか? 抗おうとしてるだろ? 自分の望みの為に多くの犠牲を払おうとしてるだろ? だから……秋斗の心は追い詰められて、雛里は離れて行ったんだよ」
矛盾を呑み込むとはどういう事か、きっと桃香はまだ本当の意味で分かってはいなかった。
秋斗は自分で気付いて成長するのを待ってたみたいだが……私の望みと、星や鈴々の心の為にもう待つ事なんか出来ない。
今、この場で現実を受け止めて貰わないとダメだ。そうしないと……私達は桃香を見捨てないといけなくなる。
「お前はこの矛盾を呑み込んで進むと言ったらしいが、これを理解して尚、自分の作ろうとしてる世界を信じられるのか?」
厳しく言うと星と鈴々が漸く桃香を見た。答えをし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ