大徳の答えは白に導かれ
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懺悔からか……否。
彼女はもう、想いを寄せる彼が自分達をまだ信じてくれると期待するしか出来ず。そして敵対する事でしか……半身に近かった親友の隣に並べない。
大切なモノ達をその手に掛けるやもしれない覚悟の刃が、彼女の心に一筋の切り傷を付けていた。
己が招いた事だとしても、根の優しい少女が持つには、その刃は些か鋭すぎた。
その時に現れた人の言葉は、そんな彼女を救うモノであった。
つらつらと話してくれた主の友から促されて、朱里は自身の主の元に堪らず駆けた。
†
行軍を始めて五日目。
夕闇が落ち着く頃に桃香の天幕に私達三人は来ていた。
愛紗と朱里は居ない。今回は単独で相対せねばならないと、桃香自身で判断を下していたようだ。
机の上に並ぶ三つのお茶は、私達に馴染みのある娘娘で出される緑茶。ゆらゆらと湯気の立つお茶を前に、口をつける事もせず、どこというでもなく視界を浮かせる。
目を瞑って他の者が話すのを待つ星、難しい顔で唇を尖らし俯いている鈴々、二人とも自分から話すつもりはない。
対して桃香は、凛と引き締めた表情に力強い瞳を湛えて私を見据えていた。
「何から話そうか」
ぽつりと呟いた、普段通りの声音で。
別段気にする事も無い。わざわざ気を張らなくても、私は自分の本心を話せばいいだけなんだから。
既に自分の中で折り合いをつけたから、怒りなんか無いし、哀しくも無い。雛里の事も、秋斗の事も、乱世では有り得る事で、乗り越えなくちゃいけないモノ。裏切りでは無く、離反というのはどんな勢力にも有り得る事だから。
一寸、桃香は私の普段通りの声に驚くも、直ぐに表情を引き締めなおした。
「三人で色々と話したよ。秋斗のこと、雛里のこと、秋斗お付きの侍女二人のこと、いろいろな。その上で言わせて貰う。お前は……雛里が言った事の本当の意味を理解してるか?」
「本当の……意味……?」
桃香は眉を寄せて私を見やった。
ただ単に雛里が自分から離れて行ったわけでは無いのは分かっているようだけど、やっぱり思い至ってはいないんだろう。
目を細め、小さくため息を吐いた。このため息は呆れから……なのかもしれない。
「雛里はこう言ってるんだよ。『お前がどれだけ誰かと手を繋いで作る平和を望もうと、自分だけは絶対に手を繋がない。お前に作り出された平和な世界に入りたくない』ってな。曹操なら国の主って立場もあるし、完全に負けた場合はお前の言う事を聞くだろうけど……雛里は聞かないだろう」
「そ、そんなこ――――」
「そんなことないなんて言わせないぞ。お前の話を全く聞かない人間だっているんだよ。何度叩き伏せようと、どれだけ何かで縛ろうとも……多分、雛里の場合は秋斗しか諦めさせる事は出来
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