大徳の答えは白に導かれ
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甘い思考のままで彼の影響を一番に受けた親友に勝てるなど、万に一つも有り得ない。だからもっと策を、もっと思考を、もっと……。
もはや内から留められるはずも無く、朱里は漸く……もう一人の昏い自分を認めた。
――これからはちゃんと……全てを見透かして、操ってみせる。
知らぬ内に、彼女の口は自嘲の笑みを浮かべていた。
悲哀はあった。後悔もあった。絶望があった。
夜毎に枕を濡らし、一つ一つと自身の間違いを確かめ、もう隣に帰って来ない親友と、信じ抜けなかった彼に懺悔していた。
恐怖もあった。今の主の元では絶対に許されない手段を行える鳳凰と、自分では辿り着けない知識と思考回路を持っている黒麒麟に。
この五日で彼女が過去の自分を乗り越える為に溜めていた自責から来る絶望を、内に秘めた獣は瞬く間に食い散らかした。己の糧と出来るように。空へはばたく意思と出来るように。
今の主でも自分を御しきれると既に示されている。全てを包み込める程の大きさがある事も知っている。配られている手札は全くの別物。されども扱い方は理解していた。
しかしふと、彼女の心に疑問が来る。
――私は何がしたいんだろうか。
冷たくなろうと決めて、一番初めに考えたのはそんな事。
何を理由に自分はこの軍にいるのか。いつからかそれが他人のモノになっていなかったか。自分は何を以ってこの乱世に出ようと決めたのか。
彼女は大陸がどうすれば平和になるのか知っている。今まで積み上げられてきた歴史など、天与の才と並々ならぬ努力を積み上げてきた彼女にとっては覚えていて当然のこと。
華琳のやり方も、桃香のやり方も正しい。どちらも乱世が終われば平和になる事に違いない。
自分はただ平和を作りたかったのか、と聞かれれば否。民の役に立ちたかっただけなのか、と聞かれても否であった。
朱里が初めに望んだ事は、水鏡塾を途中で飛び出してでも成し遂げたかった事は……たった一つ。
「私は……自分の才の全てを賭けて、桃香様と一緒にこの大陸に平和を齎したい」
ただの噂から期待を込めて会いに行き、自身の才を捧げるべき主だと感じた。これこそが天命だと信じ、優しい人と共に大陸を救いたいと願った。
それを声に出して確かめた。心に、一線を引く為に。
桃香の為にと思って黙すれば崩れ、我欲を見れば視界が狭まる。何より、自身の主や仲間を信じなくて何が臣か。
彼を信じられなかった朱里は、もう二度と間違うまいと心を固めていった。天高くから全てを見据え、主を支える龍となる為に昇り上がり始めた。
ただ……静かに、ほんの一粒だけ涙を零して瞼を固く閉ざす。急な孤独感が胸に押し迫り、ひきつけを起こしたかのようにしゃくりあげた。
愚かな自分を思ってか、それとも居ない二人への
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