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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十七話 <皇国>軍の再動
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乱の為の攻撃を軍司令部が命じています。行動開始は一刻前、現在は敵防衛線を1里ほど浸透しております」

「――部隊の規模と指揮官は?」
 答えはほぼ分かりきっているが、新城は敢えて訊ねた。
 一瞬目を閉じて交信した後に導術兵は応える。
「大型聯隊規模です。主力は剣虎兵二個大隊と銃兵二個大隊の四個大隊。支隊長の名前は馬堂豊久中佐殿、次席指揮官は佐脇俊兼少佐殿です」

「――そうか。報告御苦労、行ってよし、暫く休んでいろ」
 これがどう転ぶのか、新城には未だ予想がつかなかったが少なくとも佐脇俊兼の名を聞いた時点で酷く気に入らなかった。支隊の指揮官もまた、望まぬ神輿に担がれるよりはと軍命を忠実に守る事は疑いがなく、であるからには彼らは本営制圧を軍主力に譲る事になる事も確実であった。そしてそれを狙って何者かが圧力をかけたことも理解していた。
 であるからには自分達は彼らが攪乱を行う前に本営に辿り着く事なくてはあれこれ苦労して手に入れた主導権が無意味になる事も理解していた。
 ――僕の戦争を政治で弄ぶものがいる。
 半ば直感でそれを決めつけた新城直衛は――酷く不機嫌になった。



同日 同刻 南方戦域〈帝国〉軍防衛線より北方一里
集成第三軍先遣支隊本部 支隊長 馬堂豊久中佐


 先遣支隊の行軍開始から三刻が経ち、先遣支隊もまた、近衛と同様に指揮官達を集合させていた。
 各員が得た情報の統合を行い、各級指揮官から提案された運用法についての改善案を討議し、改善案を反映させる為の方策を決定した。浸透中である為、数十人が集まったとはいえ、立ち話ではあったが数千名の命運を決める会議であった。
一通りの意見交換が終わると支隊長が中央へ歩み出た。
「――さて、諸君。ひとまず結論を確認しよう、支隊長として方針は変わっていない。
戦闘は可能な限り避ける事、旅団本部を潰すまでは敵に勘づかれてはならない。
諸君らの努力もあり、ほぼ順調に本作戦が進行している事を喜ばしく思う」
 馬堂中佐が笑みを浮かべて言う。
「この先は東に進路を変え、丘陵地帯を橋頭堡に向けて行軍する為、導術による連絡が主となる。
これが戦闘前の最後の指揮官集合となるだろう。 支隊長からは以上だ」
 再び将校たちの様子を眺める。
 ――疲労の色も薄く、士気も萎えていない。同様に浸透している近衛も上手くやっている。
 意識して笑みを浮かべたまま支隊長は満足そうにうなずいて見せる。
 ――まだ、我々にも勝ちの目があるわけだ、いやはや都合がよすぎる考えだろうが、そう考えるしかあるまい、少なくとも陽光を再び拝むまではこの幸福な考えに浸るしかない。




同日 午後第九刻 集成第三軍司令部
集成第三軍司令部戦務主任参謀 荻名中佐


 先遣支隊から初の
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