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【短編集】現実だってファンタジー
俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 中編
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リキリ回してこちらを見ていた。顔面蒼白だ。どうしたのだろうか。(かわや)か?トイレット・ベン・ジョーに会いたくなったのか?・・・流石にこれを口に出したら殴られそうだが、俺の予想に反していりこの気にしていたのは別の事柄だった。

「・・・・・・・・・・・・私、声に出してた?」

至極真面目な顔で見つめられた。いや、軽く冗談のつもりなんだろうと思ってたんだが、本音だったのか?露骨にアッピル・・・もといあれだけ露骨に好意あります行動とりまくって人をからかったたくせにその辺には一線引いてたのか。てっきり俺の認識を陥れるための巧妙な罠だと思っていた。周囲のリアクション的にあんまり意識していないものかとも。

というか、本気なのか?演技ではなく本音で漏らしたのかあの一言?疑わしいようで本当のような気もする。何だかここで冗談でしたーと流すのが無難な気がしてきたので、ちょっとおどけてみる。

「あーあー突発性難聴になったせいで何にも聞こえなーい」
「絶対聞いてたよねその反応!?」
「インド人、嘘ツカナイ」
「生粋の日本人だよね!?実家に家系図とかあるよね!?」

ちなみに、嘘をつかないというのはインド人でなくインディアン、若しくはネイティブアメリカンである。言語の中に嘘という言葉や概念が存在しないことが由来らしいが、どの部族がそうであるかはよく分からない。果たしていりこは嘘をついているのかどうか、頭を抱えるいりこをよく観察するが答えは出ない。

「聞かれたぁ・・・絶対聞かれたぁ・・・!!」

全力で突っ込まれた上にこちらの誘いに気付かなかったらしい。おーおーリンゴのように顔が真っ赤。これだけオーバーリアクションだと逆に本気なのか演技の達人なのか見分けがつかない。ここ最近は正体不明の事象である幼馴染に一方的に知られるのが嫌でいろいろからかいまくってフラストレーションを発散させてきたが、これは初めてのリアクションかもしれない。その様子は本当に恋する乙女のようで―――

「・・・その、さざめ君は私みたいな女の子・・・イヤ?」
「―――・・・」

正面から来られると、俺も何といえばいいか分からなくなった。すうっと頭の中が白くクリアになっていく。

いりこの顔は微かに紅潮し、しかしその目は期待と不安の狭間を揺れる。想いを伝えたい欲求と嫌われていた時のリスク、その二律背反が彼女の胸に渦巻く感情なのだろうか。こんな事ならもう少し女心を勉強しておくべきだったと変な後悔をする。
少しばかり、俺の認識の話に戻ろう。恋とて認識が無ければ始まらない筈だから、この思考実験にも意味はあるかもしれない。ひょっとして、俺も二律背反に揺れるがゆえに動揺したのかもしれない。

まず、俺はこいつに好意を持っていない。いや、友愛のようなものはあるかもしれない
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