俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 中編
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ぎること。俺のそれは認識と記憶の話だったが、先生にとってそれは自我とアイデンティティの話だった。何となく発想のスケールに負けた気がして、自分が異常かもと悩んでいた自分が馬鹿らしくなった。
―――そうだ、俺はいりこの事を覚えてないんだから、覚えてないものは覚えてないと言い張ってやればいい。俺はそう感じているんだから、その認識は俺のものだ。原因など二の次で構わない。
俺はこれからも1か月ほど前に出会った同級生、というスタンスを守っていこう。
心機一転、心を持ち直した俺の心境の変化を悟ったのか、先生は微笑んだ。微笑んで、ぴっと俺の目の前にある原稿用紙に指を指した。
「で、反省文書き終わりましたか?」
「・・・・・・善処します」
こうして俺の勝手な盛り上がりは、その一言であっさり沈下してしまった。考え事は後にしよう。・・・ここで「反省することなど無いと思っているからその感覚を信じます」とかいったら、流石に怒られるかな。
= =
さあ、とうとう6限の授業も終わったことだし推論を続けようか。
例えば・・・本当に例えばだが、もしも俺たち人類が今生活しているこの世界が実際にはヴァーチュアル・リアリティと呼ばれる偽物だったとして、俺達の肉体は生命維持カプセル的な所で保管されていたとしよう。当然その記憶も生活もすべては外から管理され、俺達はそれを認識しないまま生活を送っている状況が現実に起きているのだと仮定する。
だとすると俺の記憶と現実の乖離は設定の異常ということになる。俺が特殊で設定を受け付けないのか、それともいりこがここに侵入したことを俺だけが偶然感知できているのか。或いは不正なアクセスで俺の記憶が・・・ともすれば、ここは現実じゃないんだからいりこが何者かなんて大して考える必要はないのでは?
駄目だ、この線は捨てよう。異星人説と並んで訳が分からない。
人の認識を都合よく書き換えるもの。空想の世界で言えば、それは魔法とか言うのではないだろうか。脳科学とかエピソード記憶といった物理の世界を越えた幻想の技術なら、俺の頭から一人の人間の記憶だけを抜き取ったり、周囲を騙すことが出来るかもしれない。無論相手が魔法だろうと超能力だろうと、物的に証明する手段が存在しないのではお手上げだ。保留だな。
そういえば、クトゥルフ神話という架空の神話にアザトースとかいう存在がいるらしい。世界の全てはこのよく分からん神の夢であり、我々人間の認識と言うものはアザトースの眠りが終わった時に同時に消滅するとかなんとか。夢オチ説の延長線上みたいな話だ。ふむ、それじゃいりこの記憶について何一つ説明できてないじゃないか。ようし、この線は無かったことにしよう。
あるいは、実はここは何らかの手段で物理的に閉じられた世界であり、テレ
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