俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 中編
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思って何度も確認するが、皆の怒りは本物だ」
「・・・・・・まるでホラーだ」
「そこで本題。先生はその猫を数日前に拾った猫だと言い張れる?それとも実は自分がおかしくて、本当は昔から飼っていた黒犬なんだと考え直す?」
「それは、難しい質問だ。ちょっと考える時間が欲しい」
「いいですよ、自分でも意地悪な質問だと思ってます」
だが、先生の考える時間は俺の予想に反して意外と短かった。
「駄目ですね、いろいろ考えようと思ったんですが・・・私は結局それが拾ってきた白猫だと言い張るでしょう」
「何故?皆は本気で、前から飼っている黒犬だと考えて、そう認識しています。先生もこれは犬だったとうわべだけでも言い張らないと皆は先生を異常者だと思いますよ」
「ははは、厳しいな。・・・延年君。私は古いタイプの人間でね?」
「・・・?ちょっと意味を図りかねます」
自習室の椅子の背もたれにぎしりと体を預けた先生は、懐かしむように天井を見上げる。
「いや、私は教師をやる前は・・・海外の危険な所で働いてた時期があってね。周りの人は平気で嘘をつくし、囮みたいに扱われることもあった。上司も碌な人じゃなくて、ちゃんとした情報を教えちゃくれない」
「どんだけ過酷な職場ですか!?アフリカの紛争地帯にでもいたの!?」
「似たようなものさ。だから私はそこで自分の目で見たものだけを信じ、自分の考えだけが正しいと思い込むことにした」
まさかの先生・元傭兵説浮上に思わず身を乗り出してしまったが、先生は手で制して落ち着くよう促す。促されるままに椅子に座ると、先生は改めて指を組んで、真剣な瞳でこちらを見た。
「自分の直感を信じないと、ここではやっていけないと思ったんだ。だから私はそんな状況になったら、生き残るために培った直感に従って”その子は拾った白猫だ”と言い張ると思う。ご近所さんたちがいかれてしまったかとうかはさておいて、自分の直感が他人に引っ張られるのは危険だよ」
正直、ちょっと言葉が出なかった。先生のそれは要約すれば「俺が間違ってると思うんなら愚直なまでにそれに従う」という事だ。どっちが正しいのかという悩みではなく、自分の感覚が狂わされる事を「異常」ではなく「危険」と捉えている。つまり先生の言う古いタイプというのは、思い込んだら一直線という頑固な思考の事を指しているんだと思う。
「人は社会の中でしか生きていけないと言いますが・・・最後に頼れるのは自分自身だけだと、あそこで思い知らされました。私は他人に自身を委ねられない人間なんですよ。でもそれは人を頼れない事でもあります・・・余りにもぶきっちょ過ぎますから、延年君は私みたいにならないでくださいね?」
「・・・まあ、善処します」
取り敢えず思ったことは、俺と先生では問題に対する価値観が違い過
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