俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 中編
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とも俺の性格をある程度知っている。つまり2人は似ていると仮定する。二人の違いは何だろうか。人間関係的距離なら教師より生徒同士の方が近いのが普通だ。年齢も、出会う頻度も、生活の中心である家の距離もいりこが圧倒的に近い。俺個人との接触により蓄積された記憶は、いりこがもし本当に俺の近きにいたと認識しているならいりこが上。全てにおいていりこが勝っている。唯一、性別的な仲間意識では先生の方に分があるかもしれないが。
もしもいりこが男だったら、あいつは俺の親友みたいなポジションに入り込もうとしたのだろうか。いや、この仮定は俺が正常であることを前提としている以上は空論の域を越えない。重要なのは、俺が正気かどうか。
「それで延年君、今は何を考えてるんですか?」
「人間の個体差と記憶の蓄積について思いを馳せていました」
「また小難しい事を考えてますね・・・」
俺の咄嗟の一言というのは結構特殊らしく、教師は皆俺が適当な返事をすると苦笑いする。そんなに変な事を言っているだろうかとも思うが、確かに言われてみれば普通の高校生ならもっと別の事を考えている筈だ。ハマっているゲームとか好きなアイドルとかテストの結果とか、そういう話だ。
最も俺といりこはそんな話は碌にしない。他人からしたらそれ抜きで会話が成立しているのが不思議でならないというのだが、そういう意味では俺といりこは相性が悪いわけではないのかもしれない。また、俺が異常なのは実は昔からで、いりこはそれにすっかり慣れきっているのかもしれない。そう考えれば、俺は昔から変わらず、いりこも昔から変わらない。そう言うことかもしれない。
俺はその時、腹の底が冷えるのを自覚した。何も変わっていない。それはつまり、今までもこんなことが過去に起きていて、本当に俺だけが忘れているかもしれないという事じゃないか?みんなは既に本当のことを知っていて、敢えて俺に全てを黙って作り物の人間関係を押し付けているんじゃないか?
時々物語である話だが、記憶が定期的にリセットされる人物の話である。事故か何かで一定期間以上思い出を脳に残しておけなくなった俺は実はとっくに記憶をなくしており、周囲はそれを知っていて俺に過去の情報を与え続けるのだ。
そうすることで俺は毎日を問題なく送り、事故に遭った当時まであまり面識のなかったいりこが幼馴染という嘘のポジションについて率先的にパーソナリティに関わる記憶を・・・そして、一定期間が立ったら俺はまた記憶を―――
馬鹿らしい。そんなのはいつもの考えすぎじゃないか。今日も何度か下らない妄想をしたじゃないか。それと同じように流してやればいい。だのに、急に俺は自分の記憶に自信がなくなってきた。俺の精神を構成しているのは俺の記憶のみなのだから、それが否定されれば俺は足場を失うんじゃないか。そんなことは
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