第十一章 追憶の二重奏
エピローグ 明けない夜
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「ご主人様のいないところで発情期? これは本当に去勢しないといけないかしら」
桃色の髪を持つその少女は、無表情そして無感情な瞳で士郎を見下ろし、しかし杖を握る手には血管がハッキリと浮かんでいた。
「ルイズ。その時は手伝います」
夜でもハッキリと分かる金の髪の持ち主は、感情の浮かばぬ顔にある何処までも冷めた瞳で見下ろし―――だらりと下げられた右手には、目を奪われるような剣が抜身で握られていた。
「――――――ッ!!!??」
一瞬でキュルケを引き剥がした士郎は顔を上げ何とか誤解? を解こうと口を開こうとしたが―――。
「―――っま―――」
「「―――でもまずは一発殴らせなさい」せてもらいます」
開ききる前に顔面に二つの拳が捩じ込まれていた。
「はぁ……流石にアレに耐えられるものを作ることは出来ないでしょうね」
完全に日が落ち、闇に沈んだウエストウッドの森の中に一人の女がいた。
女はぽっかりと森の中に出来た広場のような場所の真ん中に立つと、辺りを見回しながら大きな溜め息を吐く。
「欠片も残ってはいない……か。何とも凄いわね」
ぐるりと周囲を見回した女の視線がある一点で止まる。
女の視線の先には、一つの影があった。
ピクリとも動かないそれからは生気を感じ取れないため、目の前にしなければ木や石と間違えてしまう程である。だが、その形は明らかに木や石ではなかった。
人、それも男だ。
女は木石のように立ち尽くす男に顔を向け、小さく鼻を鳴らす。
「ふん。お前も散々だったようね。十体の偏在を使って勝てないどころか手傷を負わせる事も出来なかったなんて……あの男がそれだけ強かったのか、それともあなたがそれだけ弱かったのか……さて、どちらなのかしら?」
揶揄うような口調を受けても、男は微動だにしない。
ただ黙って立っているだけ。
その様子に女は視線を男から外すと空に昇る月へと向けた。
「……ガンダールヴ―――いや、エミヤシロウ……か」
自分の額に手を伸ばし指先で小さく触れると、女はギリっと歯を噛み締めた。
「―――お前は一体何者なの?」
女が月を仰ぎながら何かを憎々しげに呟く姿を、男は赤い瞳でじっと見つめている。
身体を揺らすどころか瞬きもしない男は、どう見ても生きてはおらず人形と思われた。
そしてそれは間違っておらず、確かに男は主人の命令が無ければ動くことはない。
それは主人である男が見つめる女も分かっていた。
―――だから。
女がもし、そこ光景を見たのならば、
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