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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
エピローグ 明けない夜
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 突然の出来事に驚きで目を見開いたキュルケは、おずおずと顔を上げる。顔を上げると、そこには自分を見つめ笑う士郎の顔があった。

「だから、俺はここにいる」

 ―――っ。
 
 ―――ああ、もう、全く本当にこの人は。

 ……後にキュルケはこう口にする。

 ―――『ムラムラしてヤった。だが後悔はしていない』、と。
 
「―――っんぶっ?!」
「ん―――ぅ、ふ、ぁ」

 気付いた時には思いっきり爪先立ちをしており、勢い良く士郎に向かって顔を出していた。
 キス―――と言うよりも頭突きに近いものがあった気がする。
 歯と歯がぶつかりそうになったが、上手く合わさったお陰で痛い目には合うことはなかった。
 
「あ、っ、む、ふむ、ん、ぅ」

 前戯などなく最初っからクライマックスだぜ的に唇が触れた時には既に舌は士郎の口へと入り込み。その中を蹂躙していた。士郎が目を白黒させているのを薄らと開いた目で見ながらも止まる気持ちは欠片も浮かばず。吸うと言うよりも喰らうと言った様子で士郎の口に齧りつくキュルケ。互いの合わさった唇の隙間からは、大量の唾液が糸をなして甲板へと落ちていく。頬を、服を、甲板を汚しながらも長々と口を合わせ続ける二人。
 
「―――ちゅ、あむ、あ、んん、ず―――じゅ、んあ」

 頬を窄め喉を鳴らす度にキュルケの頬が、身体が熱く火照っていく。
 瞳は霞がかり、吐息は甘く熱く。
 濡れた身体を擦りつけるように押し付け、もどかしいとばかりに身体をくねらせる。

「―――ん―――シ、ロウ、っ、んぁ」

 士郎の身体に手を、足を回し、甲板の上へと引き倒そうとするキュルケの姿は、遠目で見ればまるで巨大な大蛇のようで。このまま甲板へと引き倒されれば、誰がどう見てもどうなるかは明らかであった。
 ただの大蛇ならば丸呑みにされ、ヤってやるぜ的なキュルケならばパックリと食われ……あれ? あまり違いがない?

「―――っ、きゅ、キュル、ケ、ちょ、ま―――んぐッ?!」
「―――んんんッ!!」
 
 一瞬口が離れた隙に士郎が声を上げようとしたが、直ぐに口を塞がれたばかりか、口が開いて幸いとばかりに更に士郎の口の奥深くまでキュルケの舌が入り込んでいく。
 このままじゃヤヴァイ。
 本気でヤられる。
 そう士郎がかなりの身の危険を感じた瞬間。
 
「―――ッッ!!!??」

 それを更に、遥かに超える圧倒的な恐怖が身を包んだ。

「―――ふ〜……ん。随分と楽しいことをしてるわね」
「シロウ。何をしているのですか?」

 キュルケに引き倒され、傍から見れば士郎がキュルケを押し倒しているように見えるようなよりにもよってな姿勢になった瞬間。
 士郎に二つの影が差した。
 影の主は二人。

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