第十一章 追憶の二重奏
エピローグ 明けない夜
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ない、シロウだから……。
どうして、だろう?
……明確な答えは……出ない。
でも、それでいい。
多分、こういうのは言葉にするようなものじゃない。
ただ、感じればいいだけ。
心地いい、と……。
一定のリズム。
変わらない脈動。
……生きている……その証……。
―――でも、ちょっと納得がいかない。
士郎の胸に額を当てていたキュルケの瞼がゆっくりと開く。
な〜んで変わらないのよ?
軽く身体を動かし、自慢の胸を押し付けるようにする。
……少しは早くなりなさいよ。
鼓動は変わらず一定。
こうなると、どうしても変化を起こしたくなってしまうのは当然の結果と言うものだろう。
だから、キュルケは―――。
「……でも、本当は面倒だって思ってるんじゃないの?」
顔を士郎の胸に押し付けながら、キュルケは悲しげな声音で呟く。
「実は今もひっつかれて面倒だとか迷惑してるとか……そんな風に……」
「はっ、そんなわけがないだろ。何だ、どうした? 何時もの元気は何処へ行った?」
震える声を上げるキュルケを慰めるように、士郎の厚い手がキュルケの炎のように赤い髪の上を撫でる。ゆっくり、優しく、櫛で梳くように。
「たまにはこうなるわよ……仕方がないじゃない。最近あたしって全然力になれてないし、今日だって殆んど戦力になれなかった……」
「そうか?」
「そうなのよ」
キュルケが小さく頭を縦に動かし士郎の胸を擦る。
「随分力になっていると見えたんだが」
「そりゃ魔法には自信はあるわよ……でも、やっぱりタバサやロングビルに比べたらどうしたって劣ってしまうのよ……ルイズは、まあ、比べられないし」
あれ? っと、キュルケは内心で動揺した。
ちょっと士郎を動揺させてやろうとポッと頭に浮かんだものを口にしたのだが、何故か予想以上に動揺してしまっていた……言っている本人が。
確かにそんな事は考えていた。しかし、そんなに気にしていないと思っていた、のだが、どうやら思っていた以上に気にしていたらしい。
力になれていないことが。
助けになっていないことが。
……あ〜あ、本当に、何で……あたしって、こんなに面倒な女だったっけ?
こんなに……弱かった?
士郎の身体に回していた手に一瞬力が篭もり―――直ぐに緩む。
解ける程に弱まった手の力は、自然と士郎の身体から離れ―――
「力になっている」
―――なかった。
士郎の腕がキュルケの身体に回り、強く抱きしめられる。
キュルケの身体が、士郎の身体に押し付けられた。
「魔法だけじゃない。キュルケの優しさ、明るさ、暖かさ……全て力になっている」
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