暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
エピローグ 明けない夜
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に、セイバーが不満を露わに問いただす。逃さないように士郎の腕をしっかりと掴みながら。

「……だから……勘弁してくれ」
「だから、何故ですか?」

 薄闇が広がる中でもハッキリと分かる白い頬を餅のように膨らませて抗議の声を上げるセイバーを横目で見下ろした士郎は、片手で顔を覆うと観念したように大きく溜め息を吐いた。

「っ、はぁ〜〜〜……それはだな、アルトリア(・・・・・)。お前が可愛すぎるからだ」
「………………え? は、―――ッっ!!?」
「可愛すぎて見蕩れてしまうんだよ!」

 夕日はもう沈んだと言うのに、浅黒い肌でも明らかに分かるほど顔を赤くした士郎が、セイバーを見下ろし責めるような口調で言い放つ。自分で口にした言葉がどれだけ恥ずかしいものなのか気付いた士郎が、時間が経つ毎に顔を染める赤を濃くしていく。
 相対するセイバーも士郎の言葉に一瞬呆けた顔を見せたが、直ぐに爆発したように頬どころか顔を真っ赤に染め上げると今度は自分が逃げるように勢い良く顔を伏せた。

「な、な、なに、何を、何を言っているのですかあなたは。か、から、からかわないでください」
「揶揄ってなどいない。アルトリアはメチャクチャ可愛いし、凄く綺麗だ」
「―――っ、だ、だから、か、揶揄わないでください」

 先程とは逆に、避けるように顔を伏せるセイバーに向かって、真っ赤に染まった顔を寄せながら士郎が言い募る。

「だから揶揄ってなどいないと言っているだろう! さっき俺が顔を背けたのも、アルトリアが余りにも綺麗だったから眩しかったからだ!」
「ぅ〜〜〜―――っ!?! や、やめなさい。そ、そんな嘘を言って話を逸らすなど、お、男らしくありませんよ」

 頭を抱え込み、噛み締めた口の隙間から湯気の変わりに唸り声を上げるセイバー。どれだけ言っても否定ばかりするセイバーに、同じく湯気が出そうなほど真っ赤に顔を染めた士郎が衝動的に手を伸ばす。自分が今何をやろうとしているのか自分自身でも分からないまま。
 つまるところ士郎はテンパっていたのである。

「嘘でも揶揄ってもいない!」
「っ、あ」

 セイバーの腕を取った士郎は、強くそれを引き寄せ自分の胸元へと引き込んだ。常時なら考えられないほど簡単にバランスを崩し、士郎の胸元へ飛び込むように身体を寄せたセイバーは、目を白黒させながらパタパタと手を動かす。逃げるため、ではなく驚き慌て反射的に動いてしまったものである。そんな胸元でぴょこぴょこと動くセイバーを押さえ込むように、士郎は強く抱きしめた。

「―――っ!!??」

 士郎に抱きすくめられ動きを止めたセイバー。動きが止まったと言うよりも、氷着いたと言ったほうが正しいだろう。体だけではなく表情も固まったセイバーは、微動だにしない。強く抱きし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ