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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
エピローグ 明けない夜
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の花が咲いていた。
 
 折れそうなほどに華奢な肢体を薄い緑の服に身を包み込み。
 赤い夕日に照らされる中、縛らず流した髪が風に揺られ金と赤が踊り。
 白く滑らかな頬を朱に染め、包み込むような柔らかな笑みを浮かべ。
 底の見えない湖のような翡翠の瞳を眩しげに細め。

 夕日に照らされ、淡く赤く染まったセイバーがあまりにも美しく。
 ただ、ただ見つめるしか士郎には出来なかった。

「? どうかしましたか?」

 戸惑ったセイバーの声に、士郎はハッと意識を取り戻すと、霞がかったような頭を振る。

「ん、あ、ああ。い、いや、何でもない」
「何でもないことはないでしょう。本当にどうしました?」

 心配気に顔を寄せるセイバーから逃げるように一、二歩と後退した士郎は、慌てて視線をセイバーから外した。

「シロウ? どうして顔を背けるのですか?」
「い、いや、ちょっと夕日が眩しくて」
「では何故夕日に顔を向けるのですか?」

 夕日を真正面から捉えながら士郎がどもりながら返事をすると、セイバーは困惑したように首を傾げた。

「……こっちの方が眩しくないからだ」
「? 変なシロウですね」

 夕日に照らされ赤く染まった顔を小さく伏せて小声で呟く士郎の姿に、目を細めたセイバーは士郎と同じ方向に顔をゆっくりと向け、沈みゆく太陽が作りあげる光景を眺める。
 暫くの閨A二人は黙ったままじっと赤く染まった世界を見つめ続けていた。
 太陽が地平線の彼方へと姿を沈め、世界が赤から黒へと変わり出す頃、沈黙を破ったのは士郎であった。

「……セイバーは、変わったな」
「……どこが、ですか?」

 隣にいるセイバーにギリギリ聞こえる程度の小さな声で、士郎が囁く。
 返事もまた同じく、士郎にしか聞こえないほど小さかった。

「良く、笑うようになった」
「……そう、ですか?」
「ああ」
「自分では分かりません、が、シロウが言うのならそうなのでしょう」
「ほら、また笑った」

 士郎が指摘すると、セイバーは手を伸ばし夕日に照らされ微かに火照った自身の頬に触れた。

「確かに、シロウの言う通りですね。気付きませんでした。シロウは良く気付きましたね」
「それは、まあ……良く見ていたからな」
「ふふ、そう言う言葉はちゃんとこちらを向いて言って欲しいものですね」

 横に一歩足を動かし士郎に詰め寄るセイバー。互いの距離は既にゼロではなくマイナス。士郎の腕にセイバーの華奢な肩が触れる。顔を上げ伏せた士郎の顔を見ようと顔を上げたセイバーだったが、士郎は何時の間にか伏せていた顔を今度は頭上に向けていた。

「うっ……それは、勘弁して下さい」
「何故ですか?」

 逃げるように顔を動かす士郎を抗議するよう
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