洞窟の死闘
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りに金属音が響くことはない。なぜならば完全に攻撃を見切っていて、なおかつ完璧に逸らしているからだ。
そのことにゲラルドも気づき、少しずつ、少しずつ蛮刀に焦りが乗ってきていた。
強力な力というのは確かに恐ろしい。人の目につきやすく、さらに誰が見ても脅威だと感じることができる。
だが……そういった目に見える力よりも恐ろしいのは得体の知れないモノ、だ。
認識できないもの、理解できないものは古来より恐怖の対象とされた。呪いや妖怪、幽霊、神など目に見えないものをそういった言葉に置き換え、恐れた。
ゲラルドの気持ちはまさにそれだ。自分は全力で攻めている。端から見ても有利に見えるだろう。現に彼の部下である二匹のゴブリンは歓声をあげている。
だが、ゲラルドの顔には焦りの色が見えた。
なまじ実力があったために手応えから完全に受け流されているのが理解できていたのがゲラルドの不幸だったのだろう。
俺のポーカーフェイスもその不幸を助長する要因になったことは想像に難くない。
俺と戦っているやつらが口を揃えて言うのは、なにをしてくるか分からないから怖いという言葉だ。
もちろん言った連中は〆ておいたが……。
どうやら俺が受けていると遊ばれていると思うらしい。
ゲラルドもその状態だろう。攻撃は速く、鋭くなっているが、最初の頃の実戦削りを思わせる読みにくい剣筋はなりを潜めている。
鋼糸もない今、狙うはゲラルドが我慢できなくなり勝負に出たとき、ということだ。
「強いなぁ! 俺様の攻撃を受けてここまで耐えたやつなんて初めてだぜぇ!」
空を斬る蛮刀が辺りに撒き散らす風斬り音のみが響く中、ゲラルドは自身を奮い立てるかのように大声を張り上げる。
風圧により地面に転がっている松明の炎が揺らめき、薄暗い洞窟の壁を照らしている中での戦い、すでに完全に俺がコントロールしていた。
そしてついにゲラルドが現状を打破せんと勝負に出る……つまり俺が狙っているチャンスがやってくる。
「がぁぁぁぁ!」
凶悪な叫び声とともに少し下がったゲラルドがこちらに盾を構えながら蛮刀の切っ先を下に下げたまま跳びこんできた。
一撃だけの攻撃では俺に通用しないことはゲラルドもわかりきっているだろう。
にも関わらずこうして斬撃を放とうとしているということはやはり囮……ということだな。
本命はシールドバッシュか。
受けてたつと言いたいところだが、蛮刀を流した後の状態では難しい。面での攻撃を一刀の状態で受けるのはできないとは言わないが相当な神経を使う。
そうなれば隙を晒すことになるから却下だ。
となるとやはり一旦下がって返す刃で斬り捨てる。
俺はそう決めると剣をクロスさせ下からえぐりこむよう
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