俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 後編
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
たくさんさざめ君を好きになっていった道だよ。長くても短くても全部大切な思い出じゃない。それを否定されたら・・・」
「じゃ、俺は今日から記憶喪失だとしよう。お前は俺の事をすっぱり諦めろ。覚えてないなら肯定も否定もない」
「屁理屈だよそんなの!記憶がなくたって私の事覚えてなくたって、やっぱりさざめ君はさざめ君でしょ!?・・・・・・って、あれぇ?」
どうやらいりこは俺の無駄に遠回しな言い方が何を意味しているのかに気付いたようだ。
俺が勝手に作っていた認識の壁は、もし俺が本気でいりこの事を好きに思っている場合は意味が無い。言い訳しているだけで、その壁は本当はあっても無くても大して変わらないのだ。ガンマ線が殆どの物質を透過するように、愛という不確かなものはどんな壁でも防ぎようがない。
「俺からこんな事を言うのは可笑しいとも思うけど・・・お前が本気で好きなら幼馴染に拘る必要なんかなかったろ。俺はお前の事を嫌いじゃないし、可愛いとも一緒に居たいとも・・・まぁ、ちょっとは思ってるよ。ただ、あと一歩踏み込めてないだけだ。お前の想い人は結構なチキンだぜ」
「そっか・・・・・・そっかそっか、そうなんだ。私、可愛いんだ?」
「ちょっとばかし癪ではあるけどな」
そう言うと、いりこは嬉しそうに人の上でもぞもぞ動き始めた。顔は見えないが、縮こまってた腕が俺の胴に回っている。人が無駄に体を張って庇った上にいろいろと頭を絞って励ましてやったのだが、嫌われてないと分かった途端にこの反応かよ。なかなか現金な奴だ、こいつは。
上半身を起こしてその面を拝んでやろうとしたが、人の腹に顔をうずめているせいで見えなかった。まるで子供のような甘え方だ。子供は不合理な行動をとるから苦手なんだが。
「重い、そろそろどけ」
「やだ。さっき告白紛いのこと言った人のチキン加減に甘えてるもん」
「こ、こんにゃろう、いりこのくせに生意気な・・・・・・はぁ、今だけだぞ。いつ他の奴が探しに来るかも分かんないんだから、満足したらどけよ?」
「うんっ♪」
どかそうと振り上げた腕を、力なくゆっくりといりこの頭に降ろした。ぽん、と頭上に降ろされた腕を掴まれて、何故か頬ずりされる。頬の柔らかい感触がくすぐったかった。
―――ちくしょう、駄目だ。自分の正気もこいつの異常も疑っているのに、やっぱりこいつは嫌いになれない。だからこそ、こいつが”幼馴染としてしか寄ってこない”という事実に俺が苛立っていることは―――彼女が見ているのは自分ではないのかもしれないという意識は、自分を騙して心の底に放り込んで蓋をした。
やっぱり認識の壁って奴は、依然として存在しているようだ。この壁を自分で壊すか、向こうが壊すのを待つか。これがなかなか難し問題だな。もしこれを壊したいと思ったら―――いりこは手
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ