俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 後編
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ろ勇気出してアピールしても、全部棒に振ってるかもしれないじゃない。さざめ君、いつも私のこと悪く言うんだもん」
震える声に、どうしてか胸が締め付けられる。人間の感受性というのは不思議なもので、たとえそれが自分に向けられたものでなかったとしてもこうして胸は痛む。それとも、そうやって痛みを感じるのは俺が彼女の哀しみを自分のものとしてイメージするが故の錯覚なのだろうか。それを罪悪感と呼ぶのかどうかは分からないが、今度からは少しくらい態度を改めようとぼんやり決めた。
「一緒で楽しかったのに。いつだって困った時は嫌な顔しながら、でも手を貸してくれて、優しいなって一人で勝手に思ってて・・・でも、幾ら一緒に過ごしてもさざめ君が何考えてるのか分かんなかった。気味が悪いって言われたとき、足場が崩れて落ちちゃうような気分だったんだよ?」
「・・・お前を本気で追い払ったことはないだろ?それが答えの一端だと思うけどな」
「でも”お前は誰だ”なんて言われたら、私の心はかき乱された。そんなこと今までなかった。焦って、伝えたくて、でも怖かったからいつか言おうって・・・・・・今日、あんなところで言う気なんかなかったのに。何で上手くいかないのかなぁ?どうせ言うならもっと雰囲気があって、綺麗な場所で・・・・・・したかったのになぁ」
「人生は試行錯誤するもんだろ」
「私なんて、失敗が怖くて何も出来なかったのに。本当に私の事が嫌なんだって思って、一人で勘違いして・・・それでも試行錯誤の一言で済ませるの?それは、ずるいよ。ずるい・・・」
俺の胸元で震えるいりこは今まで見たことが無いほど小さくて脆い存在に見えた。親と離れて寂しがる子猫を抱いているような気分。彼女の涙が止まったかどうかは見えないが、しばらくはいりこのしたいようにさせておこうと自分を納得させた。泣かせた責任は、多分俺にあるから。
彼女の体温を感じながら、俺はさっき彼女が勘違いをするきっかけになった問答を思い出した。
自分のような女は嫌か、という質問に対して俺は嫌かそうではないかで物事を考えなかった。俺が彼女を避けようとしてしまう自分の心の方向性を一瞬見失ってしまったからだった。
だが、今になって思えば一つ分かることがあった。
「なぁ、いりこ」
「・・・・・・」
返答はないが、構わず続ける。
「お前が幼馴染かどうかって、重要なことじゃないんじゃないかな」
「え・・・?」
「お前、いっつも幼馴染だとかずっと一緒にいたとかそんな事ばかり言ってたろ。でも、考えてみれば人が恋をするのに理由なんて何でもいい。吊り橋効果でも一目惚れでも、きっかけは何だっていい。真実の恋とか本当の愛とかドラマでは言うけど、そんな格式ばったものである必要なんかないだろ?」
「でも・・・一緒にいた時間は絆だよ。
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