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【短編集】現実だってファンタジー
Mission・In・賽の河原 後編
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分を見直したことを考えると、その感動たるや計り知れない。きっとあの足しに対してみせる死んだ魚のように生気のない瞳も、今は純真な輝きを取り戻している筈だ。レッツ、イン!!

子供たちは思ったより奥の方―――この区画に2つある供養の塔の近くに集まっていた。気配からして完成した塔はあの辺りに8つ、確かに完成している。これで完成させた子供は供養を終了したことになる。また、すでにこの中の数十名は十分な期間賽の河原で過ごしたことから救済の対象となっている。
迷える魂が輪廻の環に戻るのは、地蔵菩薩としてとても喜ばしいことだ。人の魂はより多くがその罪を償い、また現世で生まれてほしい。特に不幸な前世を送った子供たちには、来世では良き未来が訪れて欲しい。そんな慈悲深き願いがあるからこそ、菩薩は救済する魂が増えることが喜ばしい。

くしくも、瞳に関しての想像だけは正しかった。確かに子供たちは鬼や地蔵菩薩に向けるあの胡乱気で鬱陶しそうな瞳ではなく、何かをやり遂げた人間の、死んでいるくせに生気に満ち溢れた顔をしていた。もう余計なことは言うまい。既に子供たちの後ろにそれは見えている。


―――完成された供養の塔。十重二十重にも重なった石の積み重ね、生半可な覚悟では組み上げることも叶わず、無情にも鬼に崩されてしまう、人の意志の結晶。

父様、母様、先立つ不孝をお許し下さい―――その謝意。

それが積み重なった供養の塔なのだ。

感無量。ただその一言に尽きる。塔に込められた思いの量くらい、功徳を積んだ地蔵菩薩には手に取るように感じられる。

その感動をそのまま、地蔵菩薩は子供たちの方を向いて問うた。

「この塔を完成させたのはどの子でしょうか?」

「はい!」
「へい!」
「はぁい!」
「HEI!」
「はいはい〜」
「ほいさ」
「はいはいは〜い!」
「ハイッ!」

妙に個性を出そうという芸人精神が垣間見える返事だったが、きっちり8人。全員が今回救済対象だったことは違うため、理論上の最高数の救済だ。救済は地蔵菩薩の一大大仕事なので気合を入れなけれな―――と考えていた、その矢先。



「はーい!」
「ういっす!」
「あ、俺も」
「あたちもよ」
「私もよ!」
「俺も俺も!」
(わらわ)も〜」「(それがし)もにござる」「小生も〜」「わたくしめも従事しました」「おいらも積んだぜ!」「ワタシも〜」「おいどんも〜」「お前ら喋り方がウケ狙いすぎだろ」「きゃはははっ!みんな面白ーい!」「お前はこんな湿っぽいところでもマイペースだな」「元気なのはよいことだ!」「元気があれば転生もできる!」「つーかウチ、キリシタンやってんけど」「・・・それマジ?」「うちは浄土真宗〜」「真言宗〜」「17歳教〜」「お前それは信仰とはちげーから!
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