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無欠の刃
幼い日の思い出
さてとそろそろ
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と目の前の報告書を見比べていたサスケは、やがて、たどたどしくも尋ねた。

「だから、殺した、の?」
「…ああ」

 サスケにとっての家は、ここでしかない。サスケにとっての家族は彼等でしかない。
 けれども、それでも、イタチは殺すという選択肢を選ぶしかなかった。
 サスケを、自分の大切な弟を加害者になんか、犯罪者になんかしたくなかった。
 何よりも。
 イタチは、弟だけは殺せなかったのだ。
 父も、母も、気になっていた少女も、毎日挨拶してくれた知り合いのおばさんも、親しげに笑いかけてくれたおじさんも、誰も殺したくなかったけれど、それでも。
 それでも、サスケが生きてくれさえすれば。
 サスケだけでも幸福になってくれれば、それでいいと、思った。
 バカだなと、彼は自嘲する。
 そのせいで、サスケは大切な家族を失ってしまうというのに、サスケは帰る場所を無くしてしまうというのに。誰かを恨んで、逃げ出すことも出来なくなってしまったというのに。
 けれど、それでも、サスケには生きていてほしかった。

 「悪いな、サスケ。これは忘れてくれ」

 ありったけの謝罪の気持ちを込めて、イタチはそう言った。

 「にいさ…ん?」

 ふと、瞼が重くなって、まるでぬかるんだ泥に囚われたかのように、思考が回らなくなった。
 足が、腕が、体が重たい。
 ゆっくりと倒れていくサスケに向かって、イタチは小さく、泣きそうな顔をしてつぶやいた。

 「俺がお前の復讐するべき相手だ。お前は俺によって家族を殺された、お前は俺を恨んでいる、お前は俺を殺したい。俺はお前が弱いから殺さなかった。だから、お前は強くならなければいけない」

 満月によって照らされた光の中、赤い瞳がこちらを見つめていた。

 「お前は俺を殺しに来い」


・・・



 「さすけ、おきて」

 長い夢を見ていたような、そんな感じだった。

 「かと、な」

 見慣れた赤い髪の毛が映り、次の瞬間、ずきずきと頭が痛んだ。
 脳裏で一瞬、写輪眼が思い出されたような気がしたが、霞みがかったような思考では、上手く思い出せなかった。
 まだ夢の中に居るかのようなふわふわとした感覚を覚えながら、辺りを見回す。
 カトナとナルトの家のようだ。現状を把握した後、サスケは先ほどの記憶を思い出そうと頭をひねった。
 兄のイタチが居た。自分が居た。自分は何かに怒っていた。兄は家族全員を殺していた。
 そこまでは思い出せるのに、一体、自分が何に対して怒っていたのか分からず、サスケはカトナを見た。
 目の前にいる少女に関係していた、ように思うが、どうにもはっきりしない。曖昧模糊となった自分の脳に、サスケが苛立った時、カトナが心配そうにサスケの手を掴んだ。
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