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【短編集】現実だってファンタジー
俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 前編
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?」
「必要ないでしょ。幼馴染なんだから唾液交換くらい気にしない気にしない」
「いや気にしろ馬鹿野郎!何だその生々しいワード!?まさか俺の口に突っ込んだ箸、お前が使用した後だったんじゃ・・・」

いりこの弁当に目を落とす。彼女が食べた卵焼き、俺の食べたハンバーグと人参一切れ、そして他に何かが入っていたであろうブランクがもう一つ。
―――食ってやがった。使用済みだ。かぁっと顔が羞恥で火照るのを感じて、慌てて悟られないように顔を伏せる。向こうは自分の弁当を食べている所為で今だけ見ていないが、俺は不覚だったと肩を震わせる。
・・・OKOK、思春期特有の変なテンションと羞恥心を鎮圧することに成功した。では改めて思考実験を再開しよう。

この女、いろいろと正気か?衛生上は勿論、一般人から見た倫理的にもお行儀のいい行為ではないというか、意図的な間接キスというか、ともかくいくら幼馴染だってそんなコトする訳あるか。普通は抵抗がある。男女間なら別ベクトルで抵抗があるはずだ。これは、今までそれほど気にしていなかったが「いりこが異質な存在である」という件をもう少し真面目に考える必要があるんじゃないか?

一つ追加された仮説。実はいりこは周囲の意識を改変する能力を持った超能力者的ナニーカであり、俺に偏執的猛愛を抱いた存在なんじゃなかろうか。思わずまじまじといりこの顔を見る。

「?」
「・・・・・・」

むぐむぐと弁当の中身を咀嚼するハムスターのようにつぶらな瞳。こちらの視線を不思議に思ってか小首を傾げている。―――むう、普通にかわいい。・・・じゃなくて!俺はもっとこう何かその・・・・・・駄目だ、考えが纏まらない。

「どしたの?さざめ君・・・はっ!まさか漸く幼馴染の大切さに気付いて・・・!?」
「人の唾液を呑み込んで興奮する異常性癖者め」
「はぇ!?こ、こ、興奮なんかしてないもん!!だ、大体子供の頃は一緒にお風呂に入ったことだってあるんだから今更それくらい―――あ。」

その大声は、クラス中の生徒の耳に飛び込んだ。いや、今までの口論も近くの奴には聞こえていたのだが、最後の一つだけすごく大きく響いた。
改めて言うのもなんだが、いりこはその俺にとっての気味の悪さを除けば可愛いし人当たりも良い優等生だ。俺が絡むと悪戯っぽくなるとは周囲の談だが、それでも校内のマドンナ的な立場には割と近い場所にいる。男子からの人気があるのだ。

そんなファンに当然ながら俺は疎まれている。幼馴染だか何だかと理由をつけてべたべたくっついてくるいりこをあしらう態度は勿論、彼女に特別視されている事実も彼等にとっては妬みの種だ。それを・・・まさかのカミングアウト。&俺アウト。彼等の嫉妬ゲージは振り切れてしまった。

「延年・・・屋上」
「延年・・・校舎裏」

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