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【短編集】現実だってファンタジー
俺に可愛い幼馴染がいるとでも思っていたのか? 前編
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語である。


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俺に幼馴染はいない。

もう一度言う。俺こと延年冴鮫(のぶとしさざめ)に、幼馴染は、いない。
居ないと言ったら居ない。だって昔から友達少なかったし、近所の友達も小中学校に入ってからの友達だし。幼稚園から高校までずっと一緒のクラスだったとか、そう言う奴だっていない。少なくとも俺の記憶にはそんな人物は存在しないのだ。とても女っ気の少ない人生を送った自覚があるし、一度告白して断られたりもしている。その程度の青春だ。

「明日は小テストだね。英語の勉強した?」
「しねぇよ、面倒くさい。カンニングでいくらでも誤魔化せるのに誰がするか」
「むぅ、私はそういうのイケナイと思うなぁ!自分で覚えないとテストの意味が無いじゃない!大体さざめ君は昔っからやればできるのにサボってばっかりで―――」
「何が”昔から”だ。まるで見てきたような口ぶりじゃないか」
「見て来たよ!幼稚園から一度も別のクラスになったことないのに何言ってるの!?」
「そーかいそーかい」

そんなことはありえないんだがな、と心の中で付け加える。
有り得ないというのはテスト云々ではない。俺はカンニング常習犯なのでサボっていたことは確かだが、この女はその光景を目で見てはいないはずだ。何せ居なかったのだから。少なくとも俺の主観に基づく世界構成上はそんなこたぁ起きていないのだ。

―――要は、俺はこんな女知らんし、話したことも見たこともない。幼馴染とか有り得ん。

顔を見たのがたった1か月くらい前で、その時からこんな態度だった。馴れ馴れしい上に人のことを本当に見て来たかのように知りすぎている。何歳までおねしょしていたか迄知ってやがる。時々過去の思い出話的なものを聞かされるが、一切覚えが無いのはご愛嬌。その癖人のことは知っているのだから性質が悪い。

幼稚園も、小学校も、中学校も、俺は一度たりともこの女の顔を見たことが無い。名前だってそうだ。記憶違いじゃないかと言われても、やはり俺は見たことが無いという確信がある。だってそこまで付き合いがあったのなら覚えていない、心当たりがない事は可笑しいじゃないか。それに、どこぞのギャルゲモドキのライトノベルじゃあるまいしそんな都合のいい感じに女の幼馴染なんかいてたまるかと思う。

ところがどっこい、ここ最近―――というか高校に入学して以来、何故か幼馴染と名乗るコイツが前触れもなく突然現れた。それが俺の隣に突っ立ってにこにこしているのだ。女の子が好いてくれるのはいいことじゃないかと思うかもしれないが、当人からすれば一方的にこっちの情報を知られているなんてただのホラーでしかない。何で俺の生活サイクルから風呂に入った時に何所を先に洗うかまで全部知ってるんだコイツ。
横で俺の態度に不満そうな顔をして頬を膨らま
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