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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
 第12話 “生きる”決意をした幼き記憶
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間の弱点やどんな攻撃をすればいいか、教えてもらっている。
だから、たとえ勇人が小さい子どもでも、隙を突けば大人を殺すこともできる。
しかし、男の子は後ろに下がりながら勇人の攻撃を回避する。そして――


「よっと」
勇人の刃物を持っている方の手首を掴み捻じる。


「う!」
勇人が苦痛に顔を歪ませる。男の子は手を離す。


「いいか勇人、こうやって刃物が封じられたら相手の足を思い切り蹴るんだ。そしたら、一瞬だけど相手の力が抜ける。そしたらすぐに手を戻すんだ」
「うん……でも、相手が力を抜かなかったら?」
「その時はあらかじめポケットにもう一つ刃物を入れておいて空いている方の手で、相手の掴んでいる方の手を刺すんだ」
「それに、一撃でも切り傷を入れられたら大抵の相手は斬られたところを見てよそ見をするんだ。これは絶好のチャンスだからその隙に相手の首や頭に攻撃するんだ」
「うん! 分かったよ!」
「よし、今日はここまでにしようか!!」



「勇人、今日は頑張ったな。偉いぞ」
「ありがとう、にいちゃん」
「勇人が大きくなったときが楽しみだな。どれくらい強くなってるんだろうな?」
「にいちゃんと同じぐらい!!」
「そうか。じゃあ、俺も勇人に負けないようにしないとな!」



こんな世界でも、幸せそうに2人は暮らす。




だが――

この暮らしも長くは続かなかった。



「なんか、外の空気がいつもと違うな……誰かが殺気を向けてきてるみたいだ」
「どうしたの……? にいちゃん……」
勇人が目を擦りながらやってくる。

「おはよう、勇人。今日は外に出ない方が良いだろう」
「え? どうして?」
「嫌な感じがする……」
「ここには大人なんていないよ?」
「確かにそうだけど……それでも、嫌な予感がするんだ」
「…………」


バンッ!!

「「!?」」
いきなりドアがすごい勢いで開けられて2人は驚く。そこには――


「へへ……やっと見つけたぜ……クソガキども……昨日はよくもコケにしてくれたな……」
「勇人!! 下がれ!!」
「う、うん……」
男の子に促され勇人は男の子の後ろへ……。


「やり返しにでも来たの? おじさん」
「ああ、その通りだ!! テメエらを地獄に送るためにな!!」
男は袋から液体の入った大きな瓶を出し、中の液体を部屋の中に散く。
そして、ライターを取り出す。

「このにおい……何?」
勇人が首を傾げる。

「これは……まさか!! 勇人!! 外に出るんだ!!」
男の子が男に向かってナイフを投げつける。

「え!? 外!? どうして!?」
「いいから早く出るんだ!! こいつ、火で部屋を燃やすつもりだ!!」

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