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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十五話 酔う
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顔面蒼白になっちゃった。サアヤもフレデリカも顔を強張らせている。そろそろ終わりにするか。

「私はかつて貴方は政治指導者になるべき人物だと思っていました。多少怠惰なところは有るが現実を見る目は持っている。野心も無い、良い指導者になるだろうと……。でも今は違う、貴方は政治指導者になるべきではない。もしなれば、それは貴方にとっても同盟市民にとっても不幸だ。貴方は理想のために何百万もの人間を死地に落しかねない。戦争が嫌いだと言いながら、民主共和政を守るために已むを得ないと言いながらね」
「……」

ヤンが視線を伏せた。サアヤとフレデリカは何度も俺とヤンを交互に見ている。原作を読んで思ったのはヤンに対する歯痒さとヤンの民主主義に対する想いへの讃嘆だ。そしてヤンの誠実さと不器用さに好感を持った。民主主義国家の軍人としては最高の存在だろうと思った。

だがこの世界に来てから、より正確に言えば亡命して和平を考えるようになってからだが疑問を持ち始めた。バーミリオン星域会戦以降に起きた数多の戦争、第二次ラグナロック作戦、回廊の戦い、第十一次イゼルローン攻防戦、シヴァ星域会戦は本当に必要だったのか、避ける事は出来なかったのかと……。

ヤンは何故ラインハルトに仕官しなかったのだろう。俺がヤンなら喜んで仕官する。仕官する前にレベロと話すだろう。同盟は滅んでも民主共和政国家を残すべきだと説得する。そして帝国の内部から民主共和政の理念を説き君主独裁政の暴政を防ぐための防壁としての必要性を説く。

上手くいけば交渉で民主共和政国家の成立が出来たかもしれない。ラインハルトはヤンに好意を持っていた。そして帝国では軍の力が強かった。その軍人達の殆どが平民なのだ。どういう結果になったかは分からないが帝国が善政を続けるために民主共和政国家が必要だと説く事は出来たはずだ。何故それをしなかったか……。戦争はその結果が出てからでも良かった筈だ。

目的は民主共和政国家の存続だった。手段として交渉による民主共和政国家の樹立と武力による民主共和政国家の樹立が有った筈だ。だがヤンは前者を全く検討していない。帝国の内部情報を知る、その一点だけでも仕官は有効だった筈だ。何故ヤンは仕官をしなかったのか……。単純に専制君主に仕える事を是としなかったというのは余りにも短絡過ぎるだろう。

同盟軍十三個艦隊を率いても帝国との和平は容易では無かった。相手がラインハルトでは無くても楽では無かった。何故ヤンはあの小勢で大軍を擁するラインハルトに立ち向かったのか……。やはり自分の理想に酔っていたのだとしか俺には思えないのだ。民主共和政国家は帝国から与えられるものではなく自らの力で、市民の力で勝ち取るものだと酔っていた……。

始末が悪いよな、戦争が嫌い、人が死ぬのが嫌い、人を殺すのが嫌い、政治
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