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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十五話 酔う
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んの前で泣いたよ。笑われたけど涙が止まらなかった。爺さんも泣いてたな。

戦争の所為だな、同盟は帝国と戦争を百五十年してきた。簒奪者を斃せ、君主独裁政を斃せ、民主共和政国家である自由惑星同盟こそが銀河連邦の正統な後継者なのだと言い続けて戦ってきた。そう言い続ける事で自らの正当性を主張してきた。

殆どの同盟市民が政治家に不満は持っても自らの政治体制に不満を持つことは無い。民主共和政は絶対に正しいのだと政治家達は言い続けた。それが崩れれば帝国との戦争において何を大義として戦うのかという深刻な疑義が生じかねなかった。同盟市民は不満を持つ事は許されなかったのだ。まるで洗脳だ、これでも民主主義国家かね、馬鹿馬鹿しい。

ヤンだって最悪の民主政治でも最良の専制政治に優るなんて言い出すんだからな。俺なら最悪の民主政治は最悪の専制政治に劣ると言うところだ。専制政治なら馬鹿な支配者を殺せば済む。だが民主政治の場合は如何すれば良いんだ? 統治者を変える? 変えて悪政が止まらなかったら如何する、馬鹿な市民を皆殺しにでもするのか? 解決策を聞きたいよ、そんなものが有ればだが。

不思議なんだよな。ヤンは専制政治を毛嫌いしているがラインハルトの事は高く評価しているし敬意も払っている。でもこの世界ではブラウンシュバイク公の事など何とも思っていない様だ。良くやっていると思うんだがな、一つ間違えば帝国は崩壊する可能性も有った、宇宙はより混乱する可能性も有ったんだから。

結局のところヤンに有るのは反特権階級感情なのかな。同盟でも帝国でも特権階級を嫌った。ラインハルトは実力で成り上がった、だから嫌わなかった……、しっくりくるな。じゃあなんで俺を嫌うんだろう、俺は立派な平民で不当な扱いを受けた被害者なんだけど。ウマが合わないってやつかな、少しは同情してくれてもいいと思うんだけど……。

ヤンを見た。面白くなさそうにヴァルマー・クラウトサラートを食べている。冷めてしまったからな、美味くないのだろう、と思うのは無理があるな。どう見ても俺に言われた事が面白くないらしい。フレデリカも時折心配そうにヤンを見ている。そりゃそうだな、客をもてなす主人の態度じゃない。自棄だな、思っている事全部言ってやるか。

「ヤン提督、先程貴方は私の事をルドルフだと言った。でも私には貴方こそルドルフに似ていると思いますね」
「私がルドルフと似ている? どういう意味です、それは」
侮辱と取ったのだろう、声が尖っている。笑えるよ、俺にはあんたもルドルフも同類に見えるけどね。俺が笑い声を上げるとサアヤとフレデリカがアタフタした。

「委員長閣下、少し御言葉が過ぎます」
「このあたりでもう……」
「いやミハマ大佐、グリーンヒル少佐、止めないで欲しい。ヴァレンシュタイン委員長、続けて下さい
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