暁 〜小説投稿サイト〜
落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
 第11話 “生きる”意志
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ここは……どこだ? 天国か? いや……僕は、この場所を知っている。

この重い空気に、血の匂い……ここは……“裏”だ。
かつて自分が生まれ育った場所。

毎日、生存競争が行われている。命の奪い合いがそこら中で起きている。
大人が子どもを殺し、時には子どもが大人を殺すこともあった。
何が起きても不思議ではない世界、死が当たり前の世界。




「ぐああああ!!!!」
僕の目の前で男が目を押さえながら悶えている。

「このくそガキいいいい!!!」
「………………死ね」
勇人はナイフを振りおろし、男の息の根を止める。

動かなくなった男の荷物を漁っているとパンが出てきた。
しかし腐っている……。だが、明日へ命を繋げるためのご馳走だ。

腐ったパンを頬張りながら勇人は考える。




『ゆうと!! 生きるんだ!!』

恩人の言葉を思い出す。恩人と言っても僕より4歳か5歳くらい年上の子だけど、しかも名前は覚えていない。僕は彼に育てられた。(多分、赤ん坊の時から)
彼はすごい人だろう。まだ、3歳ぐらいの僕を守りながらこの世界で生きてこれたんだ。
それに、こんな世界で他人の面倒を見るなんて普通に考えたらありえない。
僕が今、生きているのは彼のおかげだろう。

しかし、彼とは離れ離れになり、それから会う事はなかった。

大人が僕達の住んでいる場所に入ってきた、大人の目的はまだ幼い僕でも察していた。恐らく、殺されるだろうと……。
しかし、彼は大人相手に勇敢に戦いながら僕に「生きろ」と言った。これが最後の彼の言葉だ。

1人になってからは泥水を啜り、なんでもいいから食べれそうな物なら口に入れる、そんな生活をしていた。 生きるための本能故か? それとも、僕を育ててくれていた彼のおかげか? 泥水を啜るなんて“表”じゃ普通はありえないだろう。
どっちにしろ、今は生きてこの生存競争に生き残っている。今は生きる事だけを考えよう。


生きる……? 


「生きる」この言葉が頭から離れなくなった。すると、視界が白くなってきた。



そうだ……。1つだけ、言えることがある。



こんなところで、死んでる場合じゃない!! 生きるんだ!! なんとしてでも!!




目を覚ますと遠山先輩、神崎先輩、峰先輩が銃を構えていた。

「ゲゥゥウアバババババババッ!!! 諦めろ!! テメエらじゃ、俺には勝てん!!」

これはクライマックスかな……いいとこ取りでもやってみようかな……

「うるさい野郎だな……その笑い声を聞くと虫唾が走るよ」
立ち上がり、体を引きずりながら先輩方の前に出る。

「テメエ……しぶとい奴だな」
「「「天原!?(ゆっくん!?)」
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