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新しいお父さん
第二章
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のだ。
(何処がいいのよ)
 何度見ても不細工なものは不細工である。汗までかいてその匂いもきつい。
(こんなおっさん。義理とはいえお父さんになるなんて)
 そう思うとさらに嫌な気持ちになる。
(嫌よ、絶対に)
 拒絶感しか感じない。
(何とかこの話、潰さないと)
 心の中で決めた。だが母はそんな娘の心なぞ知る由もなく元治と楽しく話をしている。夏実は憮然としたままであった。やがて二人にとっては楽しい、夏実にとっては忌まわしい時間が終わった。元治と別れ帰路につく。暗くなりかけている夕暮れの道で夏実は美代子に対して言った。
「本当に結婚する気なの?」
「話、聞いてたでしょ」
 美代子は夏実の言葉にこう返した。
「だったらわかると思うけど」
「本気なのね」
「ええ」
 そしてそれに頷く。
「信じられないわ。あんな人と」
「ねえ夏実」
 美代子は失礼なことを言われても怒りはしなかった。だが悲しそうな顔をして娘に対して言った。
「お父さんのこと。忘れられないのね」
「そうよ」
 はっきりと言い返した。
「悪い?それなのに」
「それと。あの人の顔とかが嫌なのね」
「ええ」
 これにもはっきりと返した。
「だって。お父さんと全然違うじゃない」
「あのね、夏実」
 美代子はあえて夏実に対して言った。
「確かにあの人は男前じゃないわ」
「そうよね」
 それは美代子もわかっていたのだ。
「けれど。顔はそうでもあの人は性格は違うのよ」
「性格に惚れたってこと?」
「そうよ」
 娘のその言葉にこくりと頷いた。本来なら顔を赤らめるところであるが状況が状況であった。夏実の不機嫌な様子を見てはそれは出来なかった。
「貴女もすぐにわかると思うわ」
「そうかしら」
「きっとね。だから」
「結婚するのね」
「ええ。あの人と一緒になりたいの」
「どうしてもなのね」
「そうよ、もう決めたから」
「私は反対よ」
 夏実の考えは変わらなかった。
「私のお父さんは一人だけだから」
「そうなの」
「そうよ。とにかく私は認めないからね」
 彼女はあくまで反対するつもりであった。とにかく母の行動が許せなかったのだ。再婚することもあんな男を伴侶に選んだことも。どちらも許せなかったのだ。
「いいわね」
「けれど。そのうち認めてね」
 美代子は悲しげな顔で言った。
「これはお願いよ」
「ふん」
 その言葉に顔を背ける。もう話したくもなかった。


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