変わらぬ絆
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不思議な事に涙は出ず、激情も無く、冷静な自分に驚くほど。湧き上がるのは目の前で泣く彼女達を支えてやりたい、助けてやりたい想いだけ。
どうしてだろうと考えて、直ぐに思い浮かぶのは泣く場所を与えてくれた彼であった。
――ああそうか。秋斗もこんな気持ちだったのか。
子供の様に泣きじゃくる星の頭を慈しむように撫でて、小さな鈴々の背を優しくさすって、白蓮は二人が泣き止むまで無言で待ち続けた。
しばらくして、鈴々は泣き疲れたのか眠ってしまい、星に寄り掛かっている彼女を白蓮が寝台にそっと寝かせる。
グスグスと鼻を啜る音がまだ聞こえるも、どうやら星はひとしきり落ち着いたらしく、緩く不規則な息を吐きだしながら白蓮を見ていた。
いつまでも子供のように泣いている姿を見せたくない……そんな意地から、星はどうにか自分の心を落ち着かせる事が出来た。
「『あなたは間違ってない。自分を見失わないで』……か」
無意識の内に吐き出された言葉。思い出されるのは秋斗に淡い眼差しを向けていた一人の少女。
――秋斗を想い、秋斗の全てを理解していたはずの雛里の叫びは……届かなかったんだろう。だからこそ私達の側に雛里は居ない。
「雛里が謝った意味は……きっとこれだったのでしょう」
ぽつりと零された呟きは重く、悲しみを伝えるには十分。
白蓮が何の事か分からずに首を傾げると、星は顔を俯けてつらつらと話して行った。
「雛里はあの時、私とすれ違い様に一言謝ったのですよ。その時は彼と先に恋仲になった事への謝罪かと思っていましたが……きっと彼がどのような事態となっても我らの軍から出て行く事を知っていたのでしょう」
「秋斗は頭がいいけどバカだからなぁ。星もあいつの考えてた事予想出来たんだな」
呆れて白蓮が言うと、ほんの少しいつものように笑みを零した星は答えを返した。
「少々捻くれていても優しいのが彼ですから、きっと白蓮殿の代わりに袁家を討伐、後に乱世が終わるまで幽州を代わりに良くする……といった所でしょう。倒れていなかったなら、夜天の願いを一人で叶える前に戻って来いよ、なんて悪戯っぽく笑いながら言い残したでしょうなぁ」
「だよなぁ。桃香の望む世界を作ろうとしてた秋斗だったら……曹操を裏切る事も考えてただろ」
「然り。いつも自分を投げ捨てるのが悪い所。本当に……大バカ者だ。私や愛紗ならば……手柄を立てて直ぐにでも戻るのですが、彼の場合は無茶を選ぶのは予想に容易い」
呆れたようにため息を一つ。ゆっくりと、星は普段の調子を取り戻して行った。
――私だったら……多分秋斗と同じく曹操を裏切るだろう。幽州の地を治め慣れている私を放し飼いにしつつ、噛み切られないように手を打ちつつこちらを試すのが曹操の覇王たる所以だ。桃
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