変わらぬ絆
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緒に居たんだからそのくらい予想しててもおかしくないもんな。でも秋斗がバカ言い出すのをこいつらが止めなかったかどうかなんて、ちゃんと聞かなくちゃ分からないだろ?」
言い聞かせるように言葉を紡ぎ、撫でる手は優しく、赤い髪を滑って行く。鈴々が何に怒っているのかを理解出来たのは白蓮だけだった。
鈴々は秋斗の事を心配していた。自分が行って誰かが助かるならと提案することくらい、洛陽の時点で既にしていたのだから。
鈴々は唯一、その純真さから誰色にも染まらずに全員を見て来ていた。だから彼の事も、桃香の事も、その時の状況によって感情に走りやすくとも平等に見る事が出来る中立の存在であった。
あなたは本当に……と苦笑気味な星に白蓮はコクリと頷く。
桃香も愛紗も朱里も、向けられた敵意に雛里を重ねてしまい、悲哀と後悔が再燃していく。
ぐっと、唇を噛んだ桃香はそれでも続けて行った。
秋斗が対価を聞いて倒れたこと。雛里が交渉を新たに始めたこと。そして……雛里が自分と秋斗を差し出し、桃香が止めなかったこと。
余すところなく聞いて三人は絶望に落ちた。失ったモノは……彼女達にとって余りに大きく、信じ難いモノだった。
「なん、で……おかしいのだ」
ふるふると首を振る鈴々は、多くの情報の中から一番信じられないモノに思考を巡らせ、どうにか言葉を紡いでいった。
「雛里が……そんなこと言うはず無いのだ! 皆と居たくないわけないのだ! だって……だって、鈴々とお兄ちゃんとこの前まで一緒に戦って、皆で笑って暮らせる世界を作ろうねって言ってたのだ! だからっ、あのくるくるのお姉ちゃんの所に、鈴々達を見捨てて行くわけないのだ!」
その言葉は容赦なく桃香の心に突き刺さる。誰もが、この場にいる全員が、雛里が自発的に出て行くとは思いもしなかったのだから当然。
涙を零しながら鈴々の表情はあらんばかりの怒りに変わっていく。鈴々は誰かが自分達を憎んで離れて行くという現実を受け止められなかった。否、受け止めたくなかった。
「お姉ちゃんがそんな嘘をつくなんて思わなかったのだ!」
「鈴々……やめろ……」
緩く抱きしめる。されども、鈴々は構わずその腕を無理やり開いた。
「やめないのだ! 愛紗も朱里も、なんで何も言わないのだ!? もし、その通りだったならなんで雛里を無理矢理にでも引き止めなかったのだ!? みんな、みんなおかしいのだ! 本当のこと言わないなら――――」
「やめろ!」
大きな声を上げて、机を叩いて身を乗り出そうとした鈴々を強く抱きしめた白蓮。その腕の震えが伝わり一応口を噤んだが、怒気を抑える事の無い鈴々は星に同意を求めるように視線を投げた。
しかしそこで、鈴々は目を見開き、心と思考に空白が出来た。
其処には……俯い
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