第二章
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第二章
「絶対に。また」
「何度も言うがそれは無理なんだよ」
「乗れたらそれこそ奇跡だ」
こうまで言われるのだった。
「それでどうしてなんだ?」
「そこまで言えるんだ」
「身体。鍛えます」
まずはこう言う鈴木さんだった。
「それで体力つけて」
「何でそこまでして乗りたいんだ?」
「辛かったんじゃないのか?」
皆それを聞いて眉を顰めさせるばかりだった。
「だから倒れたんだろう?」
「意地悪もされたんだろう?それでもか」
「海、好きですから」
鈴木さんはその都度言った。
「船も好きですから。大好きなんです」
「そんなに船がいいのか」
「海も」
皆それを聞いてまた首を傾げさせるばかりだった。
「あそこまでされてか」
「それでもか」
「倒れたけれど辛くなかったです」
これが鈴木さんの受けた感覚だった。鈴木さんは身体こそ壊したが精神的には辛くはなかったのだ。やつれてしまっていてもだ。
「だからまた」
「やれやれ。もう言っておけ」
「勝手にしろ」
皆鈴木さんの言葉を聞いて遂に匙を投げたのだった。
「そこまで言うんならな」
「どうなっても知らないからだ」
「僕はまた乗ります」
鈴木さんの決意は強かった。
「そう、何があっても」
鈴木さんは実際に身体の調子が元に戻るとすぐに鍛えはじめた。ランニングに筋力トレーニング、それにストレッチ。身体のケアも忘れず必死に鍛えた。
その結果身体は細いままだったがそれでも力はかなりついた。それで自信を持った鈴木さんはその時の上司に対して直訴したのだ。
「また船に。御願いします」
「駄目に決まっているだろう」
上司はすぐにこう鈴木さんに返した。
「御前は身体を壊して船を降りたんだぞ」
「もう身体は戻りました」
しかし鈴木さんはまだ上司に言うのだった。
「それに力もつきましたし」
「それでも駄目だ」
上司はあくまで聞こうとしなかった。鈴木さんの要望をつっぱね続ける。
「また身体を壊したらどうするんだ?」
「それはないです」
鈴木さんも引かない。強い声で言った。
「それだけはないように鍛えましたしそうしますから。ですから」
「それでも駄目だ」
上司も責任があったのだろう。鈴木さんの言葉を何としても引かない。その場は鈴木さんを下がらせた。しかし鈴木さんはそれでも諦めなかった。
その日だけでなく機会があれば上司に直訴した。何度も何度も。そうして遂にだった。上司も折れたのか溜息と共に鈴木さんに対して言った。
「そんなに船に乗りたいのか?」
「はい、絶対に」
鈴木さんの願いは変わらない。まさに矢の一念だった。
「乗らせて下さい、御願いします」
「船が好きなのか」
「好きです」
それ以外に返答はなかっ
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