第二話 帰して
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「う〜ん。ここは…?」
私はあたりを見回した。ここは今いるはずの横断歩道ではない。黒一面の世界だった。
その世界は何もなかった。
光も、温度も、何もかも。
「まさか、私は死んだの?」
自分で声に出してみた。否、そんなはずはない。きっとこれは夢のようなものだ。病院にいる自分が見ている夢だ。死んだわけがない。そうやって自分を納得させようとするが、気持ちの悪い不安は拭えそうになかった。
「取り敢えず歩いてみよう」
そう言って私はこの空間を歩き出す。すぐにこの空間がおかしなことがわかった。何も……足に感じない。地面を歩けば土の、床を歩けば木やコンクリートの感触が足に伝わるはずだ。例え宙を歩いていたって、こんな何も感じないなんてありえない。
……本当にどこなんだここは。
私がその事を考えて背筋が凍てついたところで、この漆黒の世界に若い男の声が響いた。
「お待たせしました。」
私は声がした方向を見た。そこにはスーツの男がいた。パッと見、20代前半。穏やかそうな顔をしていて、片手にはタブレット端末を持っている。
「あなたは誰?」
「私は死神の小池と申します。今回あなたの神様転生を担当させていただくことになりました。よろしくお願いします」
神様転生。その言葉の意味は私にはよくわからなかった。
でも目の前の男は自分の事を死神と呼んだ。それが表す事は。
「神様転生?それに死神?死神がここにいるってことはもしかしなくても私は……」
「ええ。お亡くなりになられました。即死です」
男はタブレットの画面を見ながら淡々と言った。
「そんな……」
足元が崩れ落ちるような気がした。そんなのひどすぎる。高校、大学と進学して会社に勤めてそのうち運命の人とあって結婚するんだと思っていた。そんな未来予想図を漠然と描いていた。なのに……なのに……。
「気を落とさないでください。あなたは生き返れる」
死神が私に言ったその言葉は何よりも私をひきつけた。
「本当なの?本当に……私は生き返れるの?」
すがるように言葉をしぼりだす。死神は答えた。
「ええ。生き返れますよ」
「じゃあ、すぐにでも……!」
生き返れるんだったら生き返して欲しい!そう私が思っていた直後に男は信じられない事を平然と私に言い放った。
「ゲームの世界へと」
しばらくの間時間が止まったような感覚がした。
心が小池の言った言葉の意味を受け入れるまいとしているが、無情にも頭はその意味を受け入れてしまった。
そして私の胸に湧き上がってきたのは怒りと悲しみだった。
「ゲームの世界!?ふざけないで!!私はゲームの世界とかよ
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