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とらっぷ&だんじょん!
第二部 vs.にんげん!
第22話 ほのおのりょしゅう!
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た。
 狭い岩の間を潜る。
「あれっ!」
 先に岩を潜り抜けたジェシカが、道の先で叫んだ。先は広間になっているらしい。彼女の高い声が響く。
 道の先で、アッシュの背中とジェシカの背中が並んでいた。二人して何かに見とれている。二人と同じ物を、ウェルドもすぐに見つける事になった。
 シェオルの柱だった。
 人の肌のような質感。細かく波打つ表面。
 それは内側から光っていた。
 あれほど探していた、光るシェオルの柱。
 決して壊す事はできない物。
 命の秤。
 それが、動かしがたい事実として、自分の眼前にある。
 地面が揺れた。ジェシカの隣の崖の上から、小さな石がぱらぱら転がり落ちてくる。
 息をのみ、アッシュがジェシカの肩を抱き、右手の空間に飛びのいた。直後、二人がいた場所に巨大な岩が落ちてくる。
「アッシュ! ジェシカ!」
 ウェルドは岩の向こうに叫んだ。
「ウェルド!? おれたちは大丈夫! だから――」
「柱を壊せ! ウェルド!!」
 ジェシカの絶叫が、アッシュの返事をかき消した。
「ジェシカ、ここは危険だ、もう――」
「柱を壊せ、壊せ!!」
 岩の向こう。走って行く足音。それでもジェシカは叫び続けた。
「壊せ――ッ!!!」
 その残響が、こだましながら消えていく。
 もう地面は揺れなかった。
 火の玉も追って来ない。
 柱の前にはウェルド一人きりとなった。
 光っているもの。
 それが仲間の命だった。
 波打つ肉の柱。
 それが、世界の数万の命を支える柱だった。
 ウェルドは吸い寄せられるように、シェオルの柱に歩み寄った。
「ディアス?」
 返事はなかった。柱に触れる。人肌のように温かい。
「ディアス、なあ――お前なら――」
 頭の中を、溶岩に浮かぶ赤い顔が過ぎていく。これまで遺跡内で戦ってきた数々の魔物の姿が過ぎていく。魔物に食われる外界の人間たちの幻覚が過ぎていく。ディアスの顔が過ぎていく。
『その男にとっても殺戮は不可抗力だった』
 朝と惨劇の光の中で、その顔が喋る。
『凶戦士化した者に責任をかぶせて全てがなかった事になると言うのなら――』
「ディアス」
 ウェルドは柱に爪を立てる。跪き、顔を上げた。
「ディアス!!!」

 数分後。
 時の行路図で遺跡の入り口に戻ったジェシカとアッシュは、奥から駆けてくる誰かの足音を聞いた。その誰かは、二人の間を通り抜けて町に飛び出した。
 ウェルドだった。
 二人は慌てて後を追う。
 カルス・バスティードの町は既に朝で、晴れていた。
「待てよ!」
 ジェシカが追いつき、ウェルドの肘を掴んだ。
「お前、柱はどうしたんだよ? 壊したんだろうな!?」
 雪は金色の朝日を映し、惨たらしいほど美しい。ウェルドはそのただ中に
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