第二部 vs.にんげん!
第22話 ほのおのりょしゅう!
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どこだ!?」
こっちだ、とウェルドは叫ぶが、蒸気の中にいるはずのアッシュの姿はついぞ見えなかった。息をする度に蒸気を吸い、気管支が焼けそうだ。肩を守る布の端で口を覆った。その布も、水分を吸って熱い。
アッシュを助けたい一方で、背後に迫る魔物達の影を無視できなくなる。ウェルドは魔物の駆除に集中せざるを得なくなった。
柱を壊せないと言いながら、何をしに来たんだ?
狭い橋の上で、フリップパネルで魔物達を溶岩に弾き飛ばしながら、ウェルドは自問自答する。
手伝いだよ。そうさ。柱を壊さなくったって、支道を虱潰しに探す為の要員にはなれるだろ?
つまり、自分では壊せない柱を他の誰かに壊させる為に。
自分の手を汚さずにいる為に。
どこまでも卑怯で、どこまでも自分本位。
自分がきれいな人間ではない事くらいわかっている。それでも、さすがに嫌になる。
だけど――もしこの道の先に光るシェオルの柱があったらどうしよう。自分の手で壊せないその柱が、よりによって、奇跡のような確率で、自分の前に現れたら。
そんな皮肉な話があってたまるか。だけど――本当にそうなったら――。
橋を渡りきったところで、ジェシカの声が聞こえた気がした。火の海を振り向く。
対岸に立つジェシカが、左の方を指さして、何か叫んでいるが聞き取れない。
彼女の顔が、さっと赤く染まる。
天井から火の玉が降ってきたせいだった。二つ三つ、四つ五つ、それぞれジェシカと自分めがけて落ちてくる。ウェルドは飛びのき、回避した。
「ジェシカ!!」
声が届く筈などなかった。走りながら、ウェルドはジェシカが指さしていた方向に顔を向ける。
そして立ち止まった。
これほどおぞましい魔物を見た事がなかった。
溶岩から浮かび上がる、赤く巨大な顔。
両目は糸で縫合され、額に、そして口の両端に、拷問用の太い鋲が打ちこまれている。
顎の下で二つの手を揃えているのは、手枷を嵌められているからだ。
人の想念を具現化する力が遺跡にあるのなら、いかなる想念があの化け物を生み出したと言うのだろう。
虜囚。
それが、ウェルドにとって眼前の魔物を最も的確に表す言葉だった。
煉獄に囚われし者。果つる事なき業苦。
罪を焼かれて天国に行けるなんて嘘だ。魔物の姿はそう確信させるに相応しかった。あの魔物は炎の中で苦しみ続けるのだ。それが、恐らくは――シェオルの柱に囚われた魂たちの末路なのだ。
「ディアス――」
思わず呻く。この暑さの中、息も、足も、情けない程震えだす。
「――ディアス!」
魔物の口が開く。波打つ溶岩が飛沫を上げ、その口に入っていく。
咆哮を上げた。
またも天井から、火の玉が降ってくる。
助けてほしいんだ。ウェルドは直観する。どうしようもな
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