第二部 vs.にんげん!
第22話 ほのおのりょしゅう!
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以降、事あるごとに同じ話題を振ってくるからそう察する事ができた。
自分が見捨てようとしている仲間の為に、慣れ親しんだ人が死んだ。今も誰かが命を賭けている。
次第に教会にも居づらくなってきた。
ある晩。町をあてどなく彷徨っていたウェルドは、背後から険のある声で呼びかけられ、足を止めた。
「何やってんだよ」
ジェシカだった。アッシュと二人、月明かりを照り返す雪の中に立っている。
「まさか、柱探しの邪魔しにいくんじゃないだろうな」
青い髪を風になびかせ、その風よりも冷たく鋭い顔で、ジェシカが凄む。
「さすがにそれはねぇよ! 何だと思ってんだよ!」
「何だってなにも、あんたは信用できない。柱を探さないなら何しに来たのさ!」
何をしに。
ウェルドは口ごもる。自分でもわからなかった。ジェシカに話しかけられて、初めて自分が遺跡の前に立っている事に気が付いたくらいだ。
「……行くならさっさと武器とって来いよ」
ジェシカの言葉に、ウェルドは面食らい、黙った。ジェシカは苛立ちもあらわに言い募る。
「あたしらが一緒に行くって言ってんだよ! 早くしろよ!」
「ジェシカ、何もそこまで――」
「あんたは黙ってろ! ウェルド、言っとくけど、あたしらが苦労して探した柱を壊さずに放置なんてしたら、殺してやるからな!」
ウェルドは唇をまっすぐに結ぶ。
何年か前、同じ言葉を耳にした事がある。
殺してやる、と。
※
「もう二度とここには来ないで!」
工房の入り口でフィリアが叫ぶ。
「今度あたし達に近付いたら、殺してやる!」
風が強かった。赤い砂が吹き荒れていた。
熱砂は舞い上がる度、ちりちりと肌を焼く。
ウェルドはフィリアの前に出る。
砂の向こう、紅く霞む視界の向こうに立つ、かつての幼馴染たちに告げる。
「帰ってくれ。俺達にはバイレステに戻るつもりはない」
※
「危ないっ!」
熱風が顔を叩く。
耳もとの叫び声で我に返った。アッシュが首に腕を回し、熱い岩の上に伏せさせた。頭上を灼熱の火球が掠めていく。髪が少し焦げた。
「何ぼーっとしてんだよ」
ジェシカの悪態と同時に、アッシュがウェルドから飛びのいた。彼の服の端が燃えている。
「わ、わっ――」
火は見る間に大きくなっていく。ジェシカが息をのみ、左手にトラップカプセルを握った。火を消そうと慌てふためくアッシュの足許に陣が敷かれ、次いで白い水の柱が陣から立ち上った。それがジェシカのトラップだった。
「熱っ!」
アッシュが叫ぶのが聞こえた。
冷たい水の柱は瞬く間に熱せられ、熱い蒸気となって立ちこめる。瞬く間に視界が白く閉ざされた。
「熱い、熱い!」
アッシュが熱い蒸気の中で叫んでいる。
「ジェシカ、ウェルド!
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