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やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
きっと、小西早紀の望むものは。
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何を期待しているのだ。

それに、この状況でさっきの話題を出すなんて、傷口に塩を塗るようなもんだろう。俺はそこまで空気が読めない訳じゃない。
むしろ読めすぎて捻くれてしまうくらいだ。
だから空気の読める俺は黙って座っていよう、そうしよう。

小西が明後日の方を見ながら口を開いた。

「…………花ちゃんっていうのはね、ここのジュネスの店長の息子」

おい、興味無いって言ったろうが。
なんて、口を挟めるような雰囲気ではなかったので仕方なくジュースを口へ持っていく。

「八高の後輩だったから、バイトで知り合ってからは親しくしててさ。無駄に陽気でちょっとウザいとこもあるけど、いいヤツで…………」

小西はそこで口をつぐむ。自分でも何が言いたいのか分かっていないようだった。

「ウチ、商店街で酒屋やってるからさ……」

「………………」

…………おい、そこで話をとめるのかよ。
変なところで止められた話ほどもやもやするものはない。

ただ、言いたいことが見つからない、その感覚は分かった。俺も一度経験したから。
何かを言われたところで、理解できるとは限らない。むしろ言葉だけで他人を理解しろ、なんて横暴もいいところだ。
それでも言葉にすることですっきりすることもあるだろう。
だったら少しくらいは待ってやろう。せめてバイトの休憩時間が終わるころまでは。

周囲のがやがやの中で、俺達だけが隔離されている様だった。
自分がジュースをすする音だけがはっきりと聞こえる。

と。その空間に第三者が割り込んできた。

「ちわっす、小西先輩!」

八高の学ランを着た男子がテーブルの脇に立っていた。顔はまあ、悪くない。

「花ちゃん…………」

おいおい、噂をすれば何とやらってか?
にしてもタイミングが悪過ぎるだろう。

驚いた顔をしていた小西だが、すぐに表情をつくり直した。

「おっす、花ちゃん」

うわ、変わり身早っ。やっぱり女って怖い。
だが、ジュネスの王子様はその一瞬を見逃さなかったようだった。

「先輩、何か疲れてる?」

「ま、ちょっとねー。…………それより花ちゃんは? 友達連れて自分ちの売り上げに貢献してるとこ?」

多少強引な感もあるが、小西が話をそらす。
視線の先には、少し離れたところから野次馬のごとく二人を見つめるジャージ姿の女子の姿があった。
何処かで見たような気がするのと、当然のごとく俺の存在が無視されているのは気にしない。

「違いますよ。借りてたDVD割っちまって、奢りっす」

ジュネスの王子様は事もなげに言った。
おいおい、女子と二人き
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