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やはり俺がワイルドな交友関係を結ぶなんてまちがっている。
きっと、小西早紀の望むものは。
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あり、基本形というからにはある程度常識及び経験の範囲内で理解できるもので無ければならない。ならばテンプレートとはそこそこ世の中にありふれているものであるべきだ。よってまんまテンプレートな状況に陥っても怖がる必要はない。よし、証明終了。

なんて現実逃避してみたところで現実がねじ曲がる訳などなく。
バイト女子は格好の餌食を見つけた獣みたいな目をして小西に絡み始めた。

「あれあれ、早紀〜。珍しいじゃん、ジュネスの王子様以外の男と一緒にいるの」

誰だよジュネスの王子様。響き的にアレか? 悪の親玉的ポジか?
俺の疑問をよそに、小西は言葉を返す。

「そういうのじゃないって〜。それに、いっつも花ちゃんと一緒にいる訳じゃないし」

言葉の調子自体は軽かったが、その表情は何処か強張ったように見えた。
それを見て好感触と判断したか、バイト女子がねっとりと絡み続ける。

「そっかそっか、そろそろ乗り換えかー。ま、そうだよねー、最近あいつチョーシ乗ってるし」

「……そんな事は無いと思うけど」

今度は明確に表情が歪んだ。
もしかして小西とジュネスの王子様とやらは恋仲だったりするのだろうか。他人事のようにそう思う。

何故だろうか。
去年の夏、同じような状況に置かれた俺は関わらないことを選んだ。それは今も同じはずだ。
なのに、何か違う。
何をするでもなく、ただ会話の流れに身を任せるだけ。
本当に、他人事だった。

「おっ、これはアレかー? 親の商売敵と燃え上がる禁断の恋ってやつかー?」

他人事といえば、バイト女子も等しくそうだったのだろう。
総じて他人の事はよく見える。見ることがその人の事を理解することとは同義ではないにも関わらず。
よって踏み超えてしまう。
相手にとって越えて欲しくないラインを、いとも簡単に。

だから。

「やめてよっ!!」

そんな風に小西が怒鳴ったのは、きっと予想外だったのだろう。
バイト女子はあたふたと焦りだす。

「…………あ、あー、アタシもう休憩終わりだったなー。早く行かないとドヤされちゃう。じゃ、じゃねー」

先の供述とは矛盾の生じる言い訳と共にそそくさと逃げていった。

「………………」

後には俺と小西だけが取り残される。
おい、さっきよりもよっぽど面倒な状況じゃねえか。自分だけ逃げやがって。やはりリア充、ひいてはジュネス店員は悪だな、うん。

「…………聞かないんだ」

俯いたまま、また小西は聞いた。おそらく、俺の答えなんて分かっている癖に。

「別に。興味無いからな」

そっぽを向いて告げてやる。
見知ったばかりの俺に、
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