第十一章 追憶の二重奏
第十話 剣の鳥籠
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った瞬間にはワルドの爪がその身を引き裂くだろう。
殺った。
ワルドの凶気に染まり理性が感じられない顔が喜色に歪み―――。
―――蹴り―――穿つッ!!
―――崩壊した。
剣の上で逆立ちするような格好で頭上から襲ってきたワルドの顔面を蹴り上げた士郎は、その勢いのまま他の剣の上へと移動すると、またもワルドたちの視界の中から消えてしまう。顔面を士郎に蹴りつけられ吹き飛ばされたワルドであったが、何十にも“固定”が施された肉体は士郎の凄まじい蹴りにさえ耐え抜いていた。吹き飛ばされた身体が空中に浮かぶ剣の柄にぶつかって止まると、直ぐに憤怒に染まる顔で辺りを見回し士郎を探し始めていた。
互いに決定的な攻撃を与えられない状況が続く中、突然十体のワルドたちが同時に魔法を放ち始めた。
電撃に風の刃、様々な魔法が狙いも定めず乱れ飛ぶ。だが、放たれる魔法には何らかの意図が感じられた。それが分かっていながら、士郎にはどうしようもない―――否、どうかしようとは考えていない。
「―――ッ―――ベルセルクと言いながら、随分と計算高いな」
ワルドたちの魔法により、足場である剣に容易に近づけない。攻撃の薄い剣の上を足場に移動し、誘導されるように士郎はある地点へと向かう。
「―――チッ」
狭い剣の上で器用に膝を着き辺りを見渡した士郎は―――舌を打つ。
士郎が降り立った剣の周囲には飛び移れるような剣の姿はなく、絶海の孤島のように空中にポツンと浮かんでいた。。
周囲に一度で飛んで行けるような足場はない。
そして―――十体のワルドが取り囲んでいる。
―――逃げ場は、ない。
「……チェック・メイトと言ったところか?」
狭い剣の上で器用に膝を着くと、士郎は周囲を見渡し肩を竦める。前後左右上下―――士郎を中心に球状に取り囲むワルド。歪んだ口元から覗く噛み締められた歯の隙間からは、蒸気のように熱い息を激しく音を立て吐き出し、魔法人形と化して体力など無限に等しいにも関わらず大きく肩を上下させながら喉を大きく鳴らすその姿。紅い狂気に染まった目からは一片の理性を感じられないにも関わらず、
「それにしては随分と苛ついているようだな」
明らかに苛立っていた。
しかし、それも仕方がないことだろう。ワルドの身体に士郎の剣は通らず、力は圧倒的に上。速さはほぼ互角だが、士郎と違ってワルドは飛ぶことが可能。しかも偏在により数の有利がある―――にも関わらず、ワルドの攻撃は今まで一度も当たっていなかった。いつもギリギリのところで躱されるか防御されてしまう。
追い詰めたかと思えばヒラリと逃げられ―――先
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