第十一章 追憶の二重奏
第十話 剣の鳥籠
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飛びかかる。前衛後衛関係なく、全てのワルドが我先にと己の牙を突き立てようと。全方位から迫るワルドを前に、全長一メートル少し程度の剣の上で器用に舐めるような体勢を取る。
その姿は四足の獣のようであるが、しかし、その身から滲み出る気配は無機質であり―――獣、と言うよりも昆虫、それも肉食の―――そう―――さながら蜘蛛のようで。
「―――投影開始」
ダラリと垂れ下げられた士郎の手に現れるは一振りの短剣。
鉄製の柄に無骨な五寸の刃。
士郎が握り締める指の隙間に見える柄に刻まれるは“七夜”。
とある退魔一族に伝わる宝刀。
歴史はあるが何か特別な力は持たず、ただ頑丈なだけ。
しかし、それで十分。
何故ならば、今必要なのは刀―――ではなく、その使い手の力。
稀代の暗殺者にして殺人貴。
かつて見た蜘蛛の如き身体操作。
その力が―――。
―――投影、装填―――
「―――それでは、始めるとするか」
―――全工程投影完了。
「貴様に捉えられるか―――この絶死の蜘蛛をッ!」
士郎の身体が撓み、ブレ、消える。
ワルドたちの視界から士郎の姿が消えた。先程まで士郎がいた場所に辿りついたワルドたちが戸惑うように辺りを見渡す。しかし、前後左右上下に首を廻らすも、十体のワルドの目に士郎の姿は映らない。
「―――Gaッ!!?」
突然士郎を探すワルドの内の一体が地上目掛けて落ちる。何者から頭を蹴りつけられたのだ。地に向かって落ちるワルドは無数に浮かぶ剣の上に叩き付けられる。
一瞬姿を現した士郎は、その姿が捉えられる前に移動していた。どのワルドも未だ士郎の姿を捉えられていない。
士郎の攻撃は続く。
宙に浮かび、士郎の姿を捉えようと辺りを見渡すワルドを一体、また一体と蹴り、殴り、吹き飛ばす。
背後から、頭上から、足元から、視界の死角から襲いかかる士郎を、ワルドたちは捉えられないまま吹き飛ばされ、無数に浮かぶ剣のどれかに叩き付けられる。一方的な展開。だが、しかし、未だワルドたちに決定的なダメージを与えられていない。
ワルドたちは何度も剣へと叩きつけられながらも、その度に復活し剣と剣の間を飛び回り士郎の姿を探す。
そんな中、一体のワルドが偶然士郎を見つける。丁度剣の上に降り立った時なのか、両手両足で掴むように剣の上にいる士郎を眼下に収めた。士郎を見つけたワルドは、その瞬間には既に飛び出し急降下し士郎に襲いかかっていた。落下と飛行の速度が加わり、その加速は凄まじく。士郎に到達するまで一秒もなかった。死角である頭上からの攻撃。しかも丁度足場の上に降り立った瞬間である。例え死角から迫るワルドに気付いたとしても逃げようと思
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