第十一章 追憶の二重奏
第十話 剣の鳥籠
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のワルド。
迫るワルドたちの姿に、士郎の顔が歪む。
偏在の魔法により五体に増えたワルドたちの攻撃方法は先程から変わりはない。五体の内三体を前衛、二体を後衛にした単純なもの。しかし、単純であるからこそ、それは堅実であった。距離さえ取れれば、士郎の力ならば一気に殲滅する方法は幾つもある。だが、その距離が取れない。三体のワルドがしつこい程近接戦を仕掛けてき、何とか撃退したかと思えば後方にいる残り二体目のワルドが安全な距離から魔法を乱れ撃ち、三体のワルドが戦線復帰するまでの時間を稼ぐ。色々と強化されているとは言え、単純にワルドを五体相手にするならば、そう苦労するようなものではなかったのだが、五体のワルドの連携が異常なほど密であったのだ。前衛の三体のワルドを相手にする際、士郎はまるで六本の手足を持つ化物を相手にしているかのような気がした。また、全身に掛けられた“固定”の魔法もまた地味に厄介なものであり、それなりの勢いが無ければワルドに刃がたたなかったのだ。
その厄介さを改めて確認しながら、士郎は出そうになった溜め息を噛み殺し両手に掴んだ干将・莫耶を握り締めた。
「さて、あそこまでまだ距離があるか……それまで大人しくしてくれるのなら楽だったんだがな」
木々を薙ぎ倒しながら迫るワルドを背に、更に速度を上げる士郎。ワルドの一体が殴り折った木を掴み投げつけてくる。士郎は斜めに身体を大きく倒すと地面を蹴り、膝を軽く曲げた。鈍い風切り音を立て迫る倒木。士郎の足の裏はまるで磁石で引き付けられたかのように襲いかかる木の上に触れ―――、
「―――ッ」
―――蹴った。
蹴り砕くのではなく押し込むような蹴り。木は砕かれることなく先程木を放り投げたワルドへと向かって逆再生のように飛んでいく。士郎は木を蹴った勢いで更に速度を上げ、詰められた分以上の距離を稼ぐ。壁にぶつかったスーパーボールのように戻って来た木を、腕のひと振りで殴り砕くワルド。
「―――シッ!」
鋭く呼気を吐き、宙を翔ける士郎は地面に降り立ち駆け出す―――のではなく木へと向かって一直線へと向かう。このままでは木にぶつかってしまう、しかし、士郎は慌てることなく身体の向きを変え、足を近付く木に向け―――蹴りつけた。四足歩行するかのような前傾姿勢で、士郎は木から木へと地面に一度たりとも足を着けず進む。木から木へと飛び移るその姿は、何処か四足歩行の動物と言うよりも、昆虫―――それも肉食のそれのようであった。この移動方法を取り始めた士郎の移動速度は格段に上がり、一瞬にして詰められた距離以上の間合いを得る。
「「「G、ぐ、ぁ、デル、ヴァが、ラース」」」
―――ライトネス―――
前衛三体のワルドが同時に軽量の魔法を唱え
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