第十一章 追憶の二重奏
第十話 剣の鳥籠
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だが、そんな姿になってもなお、ワルドは生きていた―――正確には、まだ動いていた。別段それは何もおかしくはないのだ。何故なら今のワルドは元々から生きてはいない。先住魔法と系統魔法が組み合わさり生まれた人形であるからだ。そのため、例え頭や心臓を貫かれても、形さえあれば戦闘に支障はないのである。
全身を剣で貫かれたワルドが、落ちていく士郎を補足する。獲物に襲いかかろうと身体に力を込め―――。
だから―――。
―――チェック・メイトと言っただろうが―――ワルド。
「―――壊れた幻想」
―――空に無色の花火が咲き乱れた。
ワルドに突き刺さった剣。
偏在が消え宙に放られた剣。
その全てが一斉に爆発した。
空高くで広がった爆風は、辺りに浮かんでいた雲を残らず消し去り完全な蒼が広がる中、その中心には無色の花が咲き乱れる。
宝具に比べ士郎が投影した数百の魔剣魔刀の内包する幻想の力は少ない。そのため、爆発の威力は低い。だが、その数の桁が文字通り違う。周囲一体に数百の爆発が同時に広がる。耳を打つ数百の爆発音が一つに聞こえるほどだ。そんな爆発の中心にいたワルドは、やはりひとたまりもなかった。
ワルドの体内、そして周囲で同時に発生した爆発。中心にいたワルドは己の内で生じた爆発により身体は幾つにも分断され、分断されたものは周囲で発生する爆発に巻き込まれ砕かれ押しつぶされた。
地上へと落ちながらその光景を余すことなく視界に収めていた士郎は、硬く引き締められていた口元を僅かに緩めると、小さく呟く。
「……何も……出来なかった、か」
あらゆる面で強化され、ハルケギニア中を探してもその力に匹敵するものを探し出すことが難しいそんな力を持った化物を無傷で勝利しながら、士郎はまるで自分こそが敗者であるかのようなそんな悔しげな、悲しげな顔を、声をしながら薄れゆく爆発の跡を見つめていた。
白く煙り蒼く澄み渡る空にたった一つ浮かぶ雲のように見えるそれを。
薄れ消え行くまで……士郎は背中が木々に触れる直前まで見つめていた。
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