第十一章 追憶の二重奏
第十話 剣の鳥籠
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を引き裂かれてしまう。
空を飛ぶことが不可能である士郎では、このワルドたちからは逃げられない。
―――そう、空を飛ぶことが不可能であるならば。
ワルドたちが突撃を敢行した瞬間―――。
―――停止解凍。
士郎は飛んだ。
足場にしていた剣を射出し、亜音速で飛ぶ士郎。ワルドたちの隙間を通り抜け、無数の剣の合間を通り過ぎ―――剣の鳥籠から脱出する。
柄を握る手を外し、足を伸ばし剣から身体を離し空へと踊り出る士郎。くるりと身体を回転させ、“剣の鳥籠”を視界に収める。“剣の鳥籠”は、無数の剣を約十メートルの間を開け、不規則に設置したものであったことから、遠目で見るとそれは歪な球の形に見えていたのだが。しかし、今、士郎の目に映る“剣の鳥籠”の姿は歪ではなく完全な球の姿をしていた。それも点画で描かれたかのような綺麗な球で。そして“鷹の目”を持つ士郎にはその詳細が見えていた。上下左右前後と切っ先をバラバラに向けていた筈が、何時の間にか全ての切っ先が球の中心に向いているのだ。そして、数百の魔剣、魔刀の切っ先を向けられる先には、“剣の鳥籠”の中心で衝突し空中で絡まっている十体のワルドの姿があった。
「……チェック・メイトだ」
支えるモノなく落下する中、拳大の大きさに見える“剣の鳥籠”に向かって士郎は右手を伸ばす。大きく手の平を開き、
―――停止解凍、全投影連続層写
「―――籠目百剣」
一気に握り締めた。
数百の魔剣魔刀が一斉に球の中心に向かって飛ぶ。加速のための助走もなく、零から一気に亜音速へ。罠にはめられたと気付いたワルドが逃げ出そうとするも既に遅く。目にも止まらぬ獣の如き速度で大地を駆け、空を飛びワルドであっても、目にも映らぬ速度で飛ぶ魔剣には流石に分が悪すぎた。十体のワルドが逃げ出そうとした時には、既に最初の剣の切っ先はワルドたちの目の前であり。“固定”を掛けられ並の刃物では斬りつければ逆に刃が欠けてしまうようなそんな身体に、士郎の投影した魔剣魔刀はするりと滑り込むように突き刺さった。十体のワルドたちの腹に、足に、頭に、顔に、手に、腕に、口に、胸に……剣が突き立つ。剣山のように一体のワルドに数十の剣が突き刺さる。だが、それでもまだ剣は後から後からワルドたちの身体突き刺さり続けた。
全ての剣の射出が終わると、一つの剣山が浮かんでいた。
その中心にはワルドの姿がある。
全身くまなく剣が突き刺さった姿は、何かの植物を思わせた。
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