第十一章 追憶の二重奏
第十話 剣の鳥籠
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向けられる杖の先端を手の甲で逸らす。ダンスの熟練者が、素人を導くような優雅とも言える動作。ワルドは士郎の作り上げた道筋に逆らう暇も考えも浮かぶ間もなくそのままの勢いで下へと落ちていく。四体目のワルドを下へと受け流した士郎が顔を上げると、そこには最後のワルドが杖を振り上げている。何かの魔法を放とうとしていた。士郎は素早く周囲を見渡し何かを確認した後、腰に佩いた剣を引き抜き、魔法を放つワルドへと―――。
「おおっ!! やったぁ!! 相棒おれっちを使ってくれるのかい!? 嬉しいねぇ!! 頑張っちゃ―――」
……投げつけた。
「―――って?! ちょおおおおおおおおいいいいいいいいいいいいい―――ッ!!??」
ドップラー効果を発揮しながらワルドへと向かって飛ぶデルフリンガー。
だがしかし、その結果はというと。
「ちっ、やはり外したか」
「―――っやっぱりって、やっぱりって言ったぁぁぁぁ〜〜〜相棒おおぉぉぉぉ!?」
放たれた魔法はデルフリンガーに吸収できたが、投擲の攻撃は軽くワルドに躱され、そのまま地面へと向けデルフリンガーは飛んでいく。
軽々とデルフリンガーを避けたワルドは、お返しとばかりに様々な魔法を乱れ撃ってくる。不可視の風の塊に音速を軽く超える速度で迫る雷。しかし、士郎はそれらを容易く再度投影した干将・莫耶で切り裂きながらも、そのまま地面へと逆らうことなく落ちていく。地面へ叩き付けられる直前、士郎は木の枝をへし折り衝撃を殺すと―――幹を蹴りつける。
「やはり厄介だな」
士郎の蹴りつけで罅は入ったが何とか生き残った木であるが、瞬きの間もなく左右から挟み込むように躍りかかった三体のワルドにより三つに砕かれた。士郎はその様を見ながらくるくると回転すると、地面に足が着いたと同時に駆け出していった。障害物のように規則性もなく生える木々の合間を縫うように翔ける士郎。迷うさまを見せず駆ける士郎の背後から、風切り音を身に纏わせながら五体のワルドが飛びながら迫ってくる。猫科の獣のように喉を『グルグル』と唸らせながら追いかけてくるワルドたちは、乱雑に生える木々が邪魔となり士郎に追いつけないでいた。
「……このまま大人しくついて来てくれれば楽だが……」
ポツリと呟く士郎。
だが、そう言った物言いは、一般的にフラグと呼ばれるものであり―――結果。
「―――そう上手くはいかないか」
三体のワルドが急加速し士郎目掛け真っ直ぐ直進してきた。後方の二体のワルドが“ウィンド・ブレイク”により先行する三体のワルドを吹き飛ばしたのだ。全身に“固定”が掛けられ鋼鉄並の強度を持った身体ならではの方法であろう。幹周り数メートルはある木々を枯れ枝でも折るようにへし折りながら士郎へと迫る三体
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