第十一章 追憶の二重奏
第十話 剣の鳥籠
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空から見れば緑色の絨毯が広がっているように見える豊かなウエストウッドの森。鳥の歌声が響き、風に誘われ揺れる木の葉の囀りは、優しく染み渡るよう。誰もが心穏やかに浸れる空間に、
――――――ッ!!!!!
鈍く重い音が響く。
音と同時に空に舞い上がるのは十数メートルはあるだろう巨大な木々。玩具のように軽々と吹き飛ばされる木々に紛れ、六つの影が空を翔ける。六つの内五つの影は空を縦横無尽に飛び回り、最後の一つを追い回していた。五つの影に追われているのは、追っ手と違い空を飛ぶ力がないのか、吹き飛ばされる周囲の木々を足場に逃げ回っている。しかし、五体の追っ手の連携は凄まじく、一瞬毎に追い込まれていくのが傍目から見て明らかであった。
「―――ッ、偏在まで使えるとは―――厄介なッ!」
士郎は足場にしていた木をへし折りながら背後へ大きく飛び退く。刹那の後、三体のワルドが二つにヘシ折れた木を薙ぎ払いながら後方に飛び退いた士郎を雄叫びを上げながら追う。
「ッ、しつ―――こいッ!!」
中空に逃げた士郎に切迫した二体のワルドが、獣の如き雄叫びを上げ風を纏った杖を突き立てようとする。鉄さえ容易く貫くだろう杖を、士郎は両手に握る干将・莫耶で捌く。剣の刃の上で滑らせるように杖を捌くと、勢い余ってつんのめるように前へとワルドたちが出る。両脇を通り過ぎて行こうとするワルドたちをそのままにするわけもなく、士郎はがら空きになった後頭部を剣の柄で叩き潰す勢いで振り抜く。
「っ?! 硬ッ!?」
『ガギンッ!!』と、およそ人体から出る筈のない音を立てながらワルドたちが地面へと向け急降下していく。士郎はワルドたちの後頭部を殴りつけた反動で身体を回転させると、背後で魔法を放って来た三体目のワルドに相対する。放たれたのは電撃。ライトニング・クラウド。無数の雷が士郎に襲いかかる。文字通り雷速で迫る電撃は、移動手段がない空中では避けることは不可能。
しかし、
「―――ッ」
士郎は両手の干将・莫耶を迫る雷に投げつけ、
「壊れた幻想ッ!!」
爆発させた。
空間に円形の歪みが生まれ、次に衝撃波が放たれた。士郎とワルドの丁度中間当辺りで発生した衝撃は、雷光を散らすと共に士郎とワルドの間を引き離す。士郎よりも下に位置していたワルドは爆発の衝撃波で地面へと落ちていく。これで三体のワルドが戦線を離脱。だが、ワルドはまだ二体いる。その内の一体が士郎の背後に迫っていた。既にエア・ニードルを振り上げており、このままでは士郎は串刺しに。だが、士郎は迫る脅威に既に気付いていた。踏ん張りが効かず動きづらい空にありながら、士郎は素早い動作で背後に振り返ると、身体を回す勢いで自分に差し
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