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独裁政権
第七章
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「はい」
 彼はそこまで考えて政治をしていたのだ。後時も考えていたのだ。
「だから。これからはな」
「左様ですか」
「後は国民に任せた」
 彼は先程と同じことを述べた。
「幸せになってくれ」
 最後にこう言い残してこの世を去った。これが独裁者と言われた男の最後だった。
 彼が死んですぐにこの国は総選挙が行われ与党が引き続き政権を担当することになった。国民が選んだのは彼等だった。しかし代替わりは行われており新しい大統領はシュツットガルトのような軍人出身者ではなく完全な文民だった。軍人出身の政治家は圧倒的少数となってしまっておりリンデンバーグも引退した。その新しい大統領はシュツットガルトをこう呼んだ。
「国父」
 こう読んだのだった。就任演説でも国民に対して告げた。
「我々は国父を忘れてはいけない。彼は我々に対して全てを残してくれたのだから」
 こう言ったのだった。これはそのままこの国における彼の評価であった。
 この後この国は政権交代もあったが全て民主的な選挙の結果であり発展と繁栄を続けた。やがて隣国は崩壊しまともな国になった。そして何時しかシュツットガルトは外国から再評価されるようになった。彼は稀代の独裁者から英雄となったのである。
「評価は今はわからない」
 外国でもこの言葉が出されるようになった。
「後になってからわかる。全てな」
「極論すればシュツットガルトは独裁者ではなかった」
 こうした意見も出されるようになった。
「強権政治家ではあった」
 こう言い替えられるようになった。
「彼は権力者だったが権力に溺れてはいなかった」
「そして贅沢もせず私もなかった」
 生前はそれとは全く逆だと国外では思われていたのだ。
「全て。国の為に尽くした」
「そうして死んだ」
 それが彼の評価になっていった。
「偉大な政治家だった」
「あの国にとっては英雄だった」
 こうも言われた。
「国を救いそのうえ発展させた」
「確かに民主的とは言い難い政治ではあったが」
 独裁者であるという評価よりもこうした評価になっていった。確かに彼は強権政治家であったがそれでも国を救った英雄だと評価されるようになったのだ。それがシュツットガルトの後世での評価であった。彼は独裁者から国を救った英雄なったのであった。
 そして腹心であるリンデンバーグも彼の死後すぐに政権から退いた。一切の公務に携わることはなく公の場にも姿を現わさず政権の顧問への就任を打診されたこともあったがそれは断った。彼はそうした話を断る都度こう言うのだった。
「私の仕事は終わった」
 こう言うだけだった。
 彼は講演等もせず故郷に妻と共に帰ってそうしてそこで静かに暮らした。彼だけでなくシュツットガルトの部下達は皆そうして余生を過ごした。時代は彼等のも
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