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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十四話 主権者
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「そうは言いません。ヴァレンシュタイン委員長が君主独裁政を如何思っているのか、それを聞きたいのです」
委員長がじっとヤン提督を見た。そして“良いでしょう”と答えた。

「君主独裁政では一人の主権者に全ての権力を集中させる。強大な権力を持った主権者は常に正しい判断と公正さで臣下を繁栄に導くという責任を果たす、これが君主独裁政の理念です。しかしここでも理念と現実にはギャップが生じる。往々にして凡庸な主権者の失政を防ぐために臣下達は主権者をコントロールしなければならなくなる。そのコントロールには主権者を殺すという非常手段さえ含まれる……」
委員長が私達を見た。そして“分かりますか?”と言った。

「主権者が馬鹿であれば失政が起きるという事では民主共和政も君主独裁政も変わりは有りません。政治制度としてはどちらも同じ欠点を持っているのです。違いが有るとすれば主権者が多数か一人かの違いだけでしかない。ヤン提督、貴方が民主共和政を信奉するのはそれが正しいからではない、あくまで貴方の嗜好の問題だ、しかも人間の本質を無視してです。違いますか?」
「……」
ヤン提督が唇を噛んだ。ヴァレンシュタイン委員長は笑みを浮かべたまま提督を見ていた。






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