暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十四話 主権者
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
フェザーンの問題もそうですか?」
ミハマ大佐が質問するとヴァレンシュタイン委員長が“そうです”と頷いた。ジャガイモを口に入れ“うん、美味しい”と言う。私もジャガイモを口に運ぶ、確かに美味しい。アスパラを口に入れた、柔らかくて何とも言えない、オランデーズソースも良い。私はこちらの方が好みだ。これなら私にも作れるかも……。

「独立させるのでしょうか?」
私が問うと委員長は“ええ”と答えてジンジャーエールを一口飲んだ。
「フェザーンは独立します。自治領などにして帝国の陰に隠れる等という事を今後は許しません。不都合が有れば何時でも叩き潰します。独立させた方が扱い易いのですよ、フェザーンも普通の国になるでしょう」

穏やかな口調だけどヒヤリとする冷たさが有った。感情が冷たいのではない、理性が冷たいのだと思う。冷酷では無く冷徹なのだ。この人はどれほど不愉快でも必要とあれば受け入れるだろう。そしてどれほど愛着が有っても不必要となれば切り捨てるに違いない。ヤン提督の事を思った。委員長がヤン提督を切り捨てる日が来るのだろうか……。

「要塞建設はフェザーンに対する警告、なのですね」
私が問うと委員長がクスッと笑った。
「それだけではありませんけどね。……一部では評判が悪いようです。軍に媚びているとか軍需産業に甘いとか。私が彼らに影響力を及ぼそうとしている、そんな声も有るらしい。如何思います、ヤン提督」

ヤン提督がちょっと戸惑うような表情を見せた。
「ヤン提督もそう思っているのでしょう。ワイドボーン提督から貴方が危惧していると聞きました」
えっと思った。私だけじゃない、ミハマ大佐も驚いている。ヴァレンシュタイン委員長が驚く私達を見て軽く笑い声を上げた。

「ワイドボーン提督に話したのも彼なら私に話すと思っての事でしょう。結構面倒見が良いですからね、彼は。貴方なりの遠回しの警告というわけだ。良い機会です、こうして一緒に食事をしているんです。回りくどい事をせず思った事を自らの口で言った方が良い。これでも聞く耳は有りますよ」
ヴァレンシュタイン委員長がこの艦に乗ったのはこれが目的だったのかもしれない……。相手はこの機会を待っていた、嫌な予感がした。ヤン提督が私達を見て一つ息を吐いた。

「要塞建設については反対ではありません。同盟、帝国がそれぞれ要塞を造る事でフェザーンとフェザーン回廊を中立化し緩衝地帯とする。今やらなくてもいずれはそういう話は出たでしょう。ならば同盟と帝国が合意の上で建設した方が問題は少ないと思います」
「なるほど、それで?」
ヴァレンシュタイン委員長が先を促すとヤン提督がちょっと困ったような表情を見せてから話し始めた。

「影響力については危惧しています。本来民主共和政は一人の傑出した人間ではなく複数の人間が責任
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ