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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十四話 主権者
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ト、ブラントヴァインスッペ、白アスパラガスとジャガイモのオランデーズソース添え。帝国では良く食べる料理です」
ヴァレンシュタイン委員長とミハマ大佐の会話を聞きながらそうなのかと思った。料理長は客が委員長だと知って気を使ってくれたらしい。
「懐かしいな、ブラントヴァインスッペか。このスープは滋養が有るんです。昔は出産直後の妊婦の体力回復用に使われたと言われています。良く飲みましたね」
「委員長がですか?」
思わず問い掛けると委員長が頷いた。
「私は体が弱かった。母はそれを酷く心配して……、これを良く作ってくれたんです」
穏やかに昔を懐かしむ表情は委員長の持つ苛烈さとはかけ離れたものだった。どちらが本当の委員長なのだろう。以前ヤン提督が言った言葉を思い出した、“あれ以来彼は変わった。心を閉ざし他者を受け入れなくなった。そして誰よりも苛烈になった”。ヤン提督は何の反応も見せない、私だけがあたふたしているような気がした。
委員長が“頂きましょうか”と言って食事が始まった。美味しいと思う。メインはターフェルシュピッツ。スパイス、レモンの皮などで味つけし茹でた牛肉。付け合せのアプフェルクレンという甘辛いソースで食べると何とも言えない、つい頬がほころぶ。でも会話が弾まない。時々美味しいという声とそれに相槌を打つ声が出るくらいだ。私とミハマ大佐が美味しいと言い委員長とヤン提督が相槌を打つ。仕方ない、私が話しかけないと。
「首脳会談は三日に亘って行われると聞きましたが」
「そうです。一応非公式ですが晩餐会のようなものも有ります。まあ主人役は向こうでこちらは客ですから余り心配はしていません。今頃向こうは準備で大変でしょうね、主人役は色々と気を使いますから。その辺りの事はグリーンヒル少佐には分かるでしょう?」
私が“はい”と答えると委員長が“御苦労様ですね”と労ってくれた。でも悪戯っぽい笑みを浮かべているから面白がっているのかもしれない。チラッとミハマ大佐を見ると困ったような表情をしていた。どうやら私の思いは当たっていたらしい。ヤン提督は特に反応を見せない。聞いてはいるのだろうけど黙って食事をしている。
「やはり和平の事を話すのでしょうか?」
「少し違いますね。正確に言うとこれからの宇宙をどのようにするかを話す事になります」
「……」
漠然としている、そう思った。委員長が私を見て軽く笑い声を上げた。
「分かり辛かったようですね。これからの宇宙は同盟と帝国の協力によって動く。その事を認識してもらい協力していく事を確認して貰うという事です。和平交渉はその中の一つです」
なるほど、と思った。和平だけではなく今後の協力体制を築くという事か……。委員長は和平を一時的なものではなく恒久的なものにしたいと考えているのだろう。
「
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