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独裁政権
第四章
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第四章

「それも全くな」
「それはわかっていますが」
「だからそんなことを言う。今軍は近代化しなければならない時だ」
 軍人出身として実によく合った言葉だった。
「だからだ。軍事費を増やすのは当然だ」
「何に使うのかとも言っていますが」
「愚問だな」
 彼は今度は一言で言い捨てた。
「それは全て予算の内訳で書いている筈だ」
「それがその通りに行われているのかと」
「行われていない筈がない」
 また断言であった。
「私が考えそのうえでチェックして行っているのだからな」
「しかし野党はわかっていません」
 問題はそこであった。
「若しかするとわかっていてやっているのかも知れませんが」
「そういえば選挙が近かったな」
 ふとそのことも思い出した。
「そろそろだったな」
「はい。予算の後二ヶ月程しましたら」
「だからか」
 シュツットガルトはそれでわかった。何故雇うが軍事費にクレームをつけてきているのか。それがわかれば対処も容易であった。
「そういうことか。選挙を睨んでのパフォーマンスか」
「どうされますか?」
「彼等が予算を政争の具とするならそれでいい」
 平然とこう述べてみせた。
「しかしだ」
「しかし?」
「これは受けて立つ必要があるな」
 シュツットガルトは腕を組んでこう述べた。
「これはな」
「ではやはり」
「国防長官を呼んでくれ」
 彼は言った。
「彼と打ち合わせがしたい。そしてだ」
「はい」
「私も出よう」
 その声がさらに強くなった。
「この問題については私が直々に議会で話をしよう。そうして野党の批判を完全に叩き潰してみせる」
「完全にですか」
「向こうにも向こうの都合がある」
 野党の動きを読んだ言葉だった。
「これで仕掛けないと議席を取れない」
「ですね。それは」
 これはリンデンバーグもわかることだった。選挙を通じての政治というものはどうしてもいい意味で注目されなければならない。だから批判しやすそうなものを見つけてそこを突いてそれで注目されそのうえで人気を得る。この国でもそれは同じだったのだ。
「しかし今我が軍は近代化しなければならない時だ」
「隣国が何時来るかわかりません」
「そうだ。その為にこれまで各国に若い将校を送り出してきた」
 そうして軍事を学ぶ為だ。軍人以外にも様々な分野の有能な若者を送り出しそうして学ばせ彼等を国家の発展に寄与させてもいる。
「そして遂に兵器の近代化を為す時に来たのだ」
「それを邪魔されてはなりませんから」
「だからこそ私自ら行く」
 軍を何としても近代化させる為だった。
「それでいいな」
「はい、それでいいと思います」
 敬礼ではなく普通の礼だった。リンデンバーグもまた軍人から文民になっていた。も
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