<2:if編>
ティアナの場合 CASE-1
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きて会釈をしてから
話しかけてきた。
「シュミット様、お待ちしてました。 今日は奥様とご一緒ではないのですね」
「ええ。 妻は少し出かけてましてね。 今日は彼女が代わりに寂しい俺の
相手をしてくれるんです」
「左様ですか。 お席へご案内しますのでコートをお預かりします」
ウェイターの男性にそう言われ、2人はコートを脱いで預けると
男性の後について歩く。
「こちらへどうぞ」
ウェイターに案内された席は、窓際の一番奥の席だった。
ゲオルグは椅子を引くと、手でティアナに座るように促した。
「ありがとうございます」
少し恐縮しながらティアナが座ると、ゲオルグはその向かい側に腰を下ろした。
「どうだ、この店は?」
ゲオルグに店の印象を尋ねられたティアナは、
店の中をぐるっと見回してから答える。
「落ち着いた雰囲気のお店ですね。 ゲオルグさんがここを選んだのは
ちょっと意外ですけど」
「そうか?」
「ええ。 私の中でゲオルグさんはもう少しモダンな雰囲気が好きっていう
印象があったので」
「そういうわけでもないんだけどな」
ゲオルグはそう言って苦笑する。
そのとき、先ほどのウェイターがメニューらしき冊子を持って現れた。
「本日のメニューでございます」
ゲオルグとティアナはそれぞれにメニューを受け取ると、
革張りの分厚い表紙をめくって眺め始める。
スープ、前菜、メイン、デザートの順に並んだ数々の料理の名前を
ひとつひとつ読み始めるティアナ。
一方のゲオルグはさっと一通り目を通すとウェイターの顔を見上げた。
「メインは肉料理がいいんだけど、オススメは?」
「そうですね・・・本日はよい牛フィレ肉が入っておりますので
ステーキなどはいかがでしょう?」
「じゃあそれで。 前菜はサラダを適当に。 スープはポタージュ。
デザートは・・・後でもかまわないかな?」
「かしこまりました。 そちら様は・・・・・」
ウェイターはそういってティアナに目を向ける。
「えっと、じゃあ私も同じで」
「かしこまりました。 お飲み物はどうなさいますか?」
ウェイターはゲオルグとティアナの両方を見ながら尋ねる。
「赤ワインでいいか?」
ティアナが頷くとゲオルグはウェイターからワインリストを受け取り、
ざっと眺めるとティアナも知っている銘柄を伝えた。
ウェイターが一礼して去るとゲオルグはティアナに話しかける。
「よかったのか? 俺と同じで」
「ええ。ゲオルグさんはこのお店の常連さんみたいなので、
あわせておけば安心かと思いまして」
「なるほどね」
そう言って、ゲオルグは納得顔で頷いた
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