暁 〜小説投稿サイト〜
ニュースキャスター
第一章
[1/2]

[1] 最後 [2]次話

第一章

                  ニュースキャスター
「結局あれなんですよ」
 今日もテレビで傲慢な上から目線で話している。
「七十代に選挙権を与えたら駄目なんですよ。与党に票を入れますからね」
 似合わないチョビ髭にミスタースポックを醜悪に描いたような顔をしたスーツの男が言っていた。彼の職業はニュースキャスターである。
「全く何考えてるんでしょうね。やっぱり歳がいったらぼけるんでしょうね」
「そうですね。処置なしです」
 その男の言葉に顔だけはいい女のキャスターが応える。これがこの番組の定番のやり取りだった。
 この番組はニュース番組であったがこの看板キャスター二人のおかげでバラエティー番組の如き人気を博していた。この男のキャスター、名前を粂春樹というがこの男が中心になっていた。
 女のキャスターは古宮陽子という。脚が奇麗なことで有名だ。なお離婚暦がある。
 そこにこのテレビ局の親会社の編集委員が出て来てご高説を垂れる。長い間それでやって来ていた。この日もこの編集委員、巣型健三郎が吠えていた。
「軍靴の足音が聞こえます」
 彼のいつもの言葉であった。まだ若いこの男は東大法学部から新聞社に入社した。まだ四十代だが編集委員になった所謂エリートである。
「与党はいつもそうなんですよ。教科書だってそうでしたよね」
「はい、国民の知らない間に変えていましたね」
「それです」
 何故かここで教科書の話をし粂がそれに応える。
「国民が気付かない間に侵略を進出と書き換え」
「僕達が気付いたからよかったものの」
「全くです」
 やはり上から目線だ。なおこの教科書の話であるが侵略と進出と書き換えたというくだりは誤報である。後にそれが週刊誌で指摘されある大学教授がこの新聞社に公開質問状を叩きつけ総合雑誌で堂々と批判を展開したこともある。しかし新聞社もこの面々もそれをなかったこととして今ここで話をしているのである。
「さて、その与党ですけれど」
「まだやっていますね」
「そうなんですよ」
 こう言うのは巣型であった。
「増税も考えていますしね」
「また知らないうちに通そうとしているんですね」
「そういうことです」
 そもそもそれは常に国会で中継され話に出ているのだがそれは言わない。そうしたところもまたしてもかなり傲慢でありかつ恣意的である。
「庶民の生活を圧迫しますね」
「そういうことしか考えていないんですよ」
「はあ」
 粂がここでわざとらしく嘆息する。
「全く。政治家はもっと庶民のことを考えないと」
「それが政治家の仕事ですよね」
「何の為にやっているんですかね」
 粂は古宮の言葉に応えてもっともらしく言ってみせた。
「政治をもっと庶民の目線でしないと駄目ですね」
「それができないか
[1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ