第百二話 教会にてその十
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大石はこの日は静かに礼拝堂を後にして眠りに入った、その翌朝。
シスターにだ、共に食事を摂りながらこう言ったのだった。
「今宵はです」
「今夜はといいますと」
「私は少し贅沢をします」
微笑みこう言ったのである。
「そうさせて頂きます」
「といいますと」
「ワインを買って宜しいでしょうか」
「ワインですか」
「はい、主の血を」
そしてそれを飲みたいというのだ。
「そうして宜しいでしょうか」
「別に」
構わないとだ、シスターは質素な朝食大石のそれと同じものを食べながら彼のその言葉に対して答えた。
「構いません」
「そうですか、それでは」
「はい、ワインをですね」
「それとチーズも」
肴はそれだというのだ。
「出来ればナッツも」
「その三つがですね」
「贅沢です」
「特に贅沢とは」
「私にとってはです」
優しい微笑みでだ、大石はシスターに言うのだった。
「それが贅沢ですから」
「だからですか」
「はい、楽しませてもらいます」
「何かいいことがあったのでしょうか」
大石の顔を見てこう問うたシスターだった、それは彼の今の晴れやかな顔を見てそのうえでの言葉である。
「昨日」
「少し」
「そうですか、だからですか」
「はい、今夜はです」
「飲まれてですね」
「それで楽しみたいです」
こうシスターに話す。
「そうさせてもらいたいのです」
「ではワインを買ってきますね」
シスターは大石の言葉を受けてにこりと笑って告げた。
「そしてチーズとナッツも」
「私が買いに行きますが」
「いえいえ、今日も買いものに行きますから」
だからだと返したシスターだった。
「お気遣いなく」
「左様ですか」
「ワインは何でもいいですね」
「はい、構いません。ですが」
柄にはこだわらない、しかしだというのだ。
「赤をお願いします」
「神の血だからですね」
「はい、ですから」
「わかりました、では赤ワインを」
「お願いします」
戦いから降りた大石は上城達に携帯でこのことを連絡もした、そして後は彼に全てを託すのだった。信じているが故に。
第百二話 完
2014・3・11
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